年収130万円の壁に変更なし

Q.社会保険の被扶養者の年収要件が緩和されたのでしょうか?

A.手続きの円滑化だけであり、年収要件に変更はありません。

 いわゆる「年収の壁」による就業調整への対応策として、被扶養者の年収要件が緩和されるという誤解があるようです。2023年10月20日、厚生労働省は「年収の壁・支援強化パッケージ」に関する通達およびQ&Aを公表し、別添として「被扶養者の収入確認に当たっての「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書」という“ひな型”を示しました。ここで説明されているのは、事業主の証明による被扶養者認定の円滑化です。

 そもそも被扶養者の収入については、「今後1年間の収入を見込むもの」であり、累積した結果として130万円に達した時に扶養を外れるわけではありません。その年の12月31日時点で判断する所得税の扶養控除とは考え方が異なります。また、「認定時(前回の確認時)には想定していなかった事情により、一時的に収入が増加し、(中略)130万円以上となる場合であっても、直ちに被扶養者認定を取消すのではなく、(中略)総合的に将来収入の見込みを判断すること」が厚生労働省の事務連絡で確認されています(被扶養者の収入の確認における留意点について・2020年4月10日)。

 今回、想定されているのは被扶養者の年収要件である130万円の壁の緩和ではなく、スムーズに被扶養者の認定が進むように手続きを見直すことです。なお、年間収入の見込みが恒常的に130万円以上となることが明らかである場合には、当然のことながら対象外となります。