人事制度の構築は、企業の業績を左右するといっても過言ではない重要な業務です。しかし、頻繁に改定をするものではないため、設計の専門家を社内で育成することが難しい業務でもあります。また、アウトソーシングを活用するにしても、自社に合うコンサルタントを探すのは結構たいへんなものです。
次のような場合は、是非一度ご相談ください。
人事制度を構築する場合には、下記のような業務を実施することになります。企業様の状況によって大きく変化しますが、下記の業務が標準パターンであり、実施する必要のないものは割愛し、企業様の状況にフィットするように調整させていただきます。
人事制度の構築は、等級制度、評価制度、賃金制度の3つが基本フレームとなり、複雑に絡み合っています。ですから、個別の企業様の状況によって、業務受託範囲は大きく異なりますので、個別にお見積をさせていただいております。なお、人事制度の構築に関するセカンド・オピニオンサービスをご希望の場合は、顧問契約と同様の報酬ポリシーとさせていただいております。
人事制度の構築には、様々な要素が絡んできますが、基本的には「等級制度、評価制度、賃金制度」 の3つの要素が重要となります。この3要素がメインフレームとなって、人事制度を形作っていくわけです。
以下では、少しそのフレームを覗いてみましょう。
人事制度の位置付け
企業経営とは、組織を構成する経営資源(ヒト・モノ・カネなど)を活用して、市場で効率的かつ継続的に実施される経済的・社会的活動だということができるでしょう。この活動の基本的方向性を規定するものが、経営理念といってよいのではないでしょうか。
左図にあるように、経営理念の下には一定期間ごとの到達点を定めた具体的な経営目標が設定され、その実現のために諸活動の実践面を方向付ける戦略があります。人事戦略は各戦略の一つであり、人的資源の調達・育成・活用・処遇などのあり方を決定する指針となります。
人事戦略に基づいて、「採用・異動」、「人材育成」、「活用・処遇」、などの具体的な人的資源管理施策が策定されますが、その総称が人事制度ということになります。中でも「等級制度」・「評価制度」・「賃金制度」は、狭義の人事制度として、その根幹を成しています。
人事制度が、的確に機能するか否かによって、人的資源活用の効率性、すなわち人件費負担の経営インパクトや競合他社との競争力に影響を及ぼすとともに、従業員活性化や企業目標達成力などの企業風土形成にも重大な波及効果がもたらされることになります。
等級制度の位置付け
人事制度というと評価や賃金制度がクローズアップされますが、実は、その根幹になっているのは等級制度です。等級制度は社員区分といっても構いませんが、何らかの区分によって賃金は分けられますし、評価される対象も変化するのが当然です。
等級制度を設けるに当たっては、①業務実態との対応、②区分の基軸の決定基準、③評価・賃金制度との連動性、という3つの要素が重要であり、等級制度が単独で成立できるものではありません(左図)。
等級制度を構築する場合には、常に評価制度と賃金制度との連動を意識しながら、実際にお仕事をしている従業員の皆さんのおっしゃることを真摯に受け止め、現実にフィットしたものにしなければなりません。
評価の対象(プロセスからアウトプットへ)
会社にとっても社員にとっても、評価制度が重要なことは論を待ちません。問題なのは、『何をもって評価するべきなのか?』です。左の模式図は、「人間の持つ能力がどのように、会社の業績へ関連しているか」の流れを表現しています。
能力は私たちの内面に存在するもので、潜在能力と顕在化した能力などといわれます。この内面から発する能力が態度や取組姿勢などと結びついて、第3者には行動として目に映ることになります。そして、行動の結果はやがて一つひとつの成果として実を結び、業績という形に集約していくわけです。このプロセスからアウトプットまでの段階に応じて、それぞれ評価すべき対象を示したものが、矢印の下に結びつく評価制度です。
どの評価を対象とするかは、会社次第です。一般的に、プロセス系評価は、安定した生活をおくるための月例給与に、アウトプット系評価は、業績変動を反映するための賞与に結びつけるケースが多いと思われます。
私たちは、日々生活をする中で、頻繁に評価をしているものです。例えば、『おいしい』や『きれい』という感想は、個人の主観で判断(評価)しているわけです。
評価制度でもプロセス系評価の場合、拠りどころとなるものは“個人の主観”です。ただし、企業として統一感を持たないバラバラな個人の主観で評価されたのでは、誰も納得しません。そこで、能力に関する評価基準を作成し運用することで、定性的な評価対象でありながら、納得感を持たせようとしたのが能力評価です。しかし、能力評価は、可視的で把握しやすいものに限られてしまい、能力の源泉部分を評価することが困難でした。
これを氷山に例えて説明したものが、左図の「マクレランドの氷山モデル」です。いわゆる能力評価が、潜在能力ではなく観察可能な顕在化した能力(知識・技術)を重視することに対して、行動評価は、海面下にあって見えないはずの“動機や特性”にもスポットを当て、可視的な行動特性として捉える点で異なります。
行動評価では、成果に結び付く能力を評価する手段として、目で観察できる社員の行動特性に着目し、評価要素として用いるものです。
目標管理という考え方(アウトプット評価)
目標管理制度は、全社の経営計画を組織単位・個人単位まで落とし込み、また、目標設定に社員一人一人が主体的に関わることで、目標達成のために各人が何をすべきかを明確にすると共に、モチベーションを向上させて、より効率的に全社計画を達成していくための制度です。
こうした目標の趣旨からすると、制度の運用は、Plan(目標設定)→Do(実行) →Check(評価) →Action(改善)のサイクルで回していくことが重要だとされています(左図)。
運用に当たって最も留意すべきことは、目標に関して上司と部下とのコミュニケーションを密に取ることです。コミュニケーションをベースにして、Plan(目標設定)・Do(実行)した結果を本人にフィードバックすることで、改善すべき点を抽出して更に高い目標を設定して、業績を向上させることにつながり、本人が主体的にマネジメントに関わることが可能となります。
賃金制度の構築
左の図は非常にオーソドックスな賃金レンジのイメージ図で、一般社員が3等級、管理職が2等級という簡略化モデルです。
各等級間の賃金レンジはオーバーラップ(重複)しており、スムーズな昇格が果たせるようになっています。ただし、一般社員から管理職へ昇格する場合は、管理職レベルとして責任は重くなり、更なる重要な業務に就くでしょうから、金額が飛躍するよう設計されています(赤い矢印部分)。いわば昔ながらの年功賃金のイメージかもしれません。
ただし、横軸は年齢ではなく、社員階層(等級制度)ですので、ドラスティックな運用をすれば、極めて成果主義的な制度にもなり得ます。成果の色彩は評価制度で表現し、賃金制度はオーソドックスに構築するというのも良いかもしれません。
さあ、人事制度の構築です。
仕事の能力は、たゆまぬ努力と経験によって、長い時間をかけて徐々に蓄積されるものです。一方、“やる気” は、少しのことで大きくもなり小さくもなる、非常に激しく変化するものです。急激な能力の向上を短期的に望むことは難しいため、性急な成果を期待しても困難な場合が多く、一定期間内に大きな成果を期待するならば、社員の“やる気”の向上に頼る他ありません。そんな社員の“やる気”に働きかける人事制度を作りたいと思いませんか?
今まで人事制度の考え方といくつかのサンプルをご紹介しましたが、どのような人事制度を構築するかはご相談です。考え方だけ共有させていただければ、十分にご一緒させていただけます。