人事の本100冊

 どの本を読めば、仕事の役に立つのか? 読んでみないとなかなか分からないものです。

 このコーナーでは書評という大所高所からではなく、人事担当者の皆様のお役に立つかどうかの視点から、簡単に書籍のご紹介をしたいと思います。

 100冊を目途に、少しずつ定期的にご紹介を増やしていきたいと思いますので、時々、チェックしてみてください。このコーナーが人事担当者の皆様の少しでもお役に立てば幸いです。

 

労働経済・人的資源管理など

日本の労働経済事情 〜人事・労務担当者が知っておきたい基礎知識

 “新入社員の教育用にいかがでしょうか?”

 労働経済というと難しそうですが、至ってやさしく簡単です。私は、新任人事スタッフセミナーの参考文献にしています。人事部門の社内勉強会に用いるのも面白いと思います。

 内容としては、T労働市場の動向・雇用情勢、U労働法制、V人事制度・労務管理、W賃金制度、X労働・社会保険の概ね5つに分かれています。ダイバーシティやグローバル化、法改正のあった労働契約法の無期転換や労働者派遣法の期間制限なども記述されており、昨今のトピックスにも気を使っているようです。人事に関するほとんど全てのテーマが網羅されているのではないかと思うほど、広く浅く一通りのことが書かれています。基礎知識とはいいながら、最後には主な労働統計調査の一覧表も載っており、「労働力調査」や「毎月勤労統計調査」も解説されているので、人事担当者としての見識を高めるためにも十分使えそうです。

 書籍のサイズは、A4版でやや大きいものですが110ページと薄く研修資料のような出で立ちです。各ページがほぼ共通のレイアウトになっていて上半分が図表、下半分が説明の文章というシンプルな構成です。読者に配慮した見やすいものになっています。研修のテキストから、ちょっと手元に置いておきたい資料集まで幅広い使い方が出来そうです。机の引き出しに1冊、保管するようなイメージで購入いただくのもよいかもしれません。800円という定価設定には頭が下がります。 

 

 

著    者:日本経済団体連合会

出 版 社:経団連出版

発 売 日:2016年7月

カテゴリー:資料集(雇用、労働など)

「超」進学校 開成・灘の卒業生 〜その教育は仕事に活きるか

 “良い学校に入れば、人生は順当か?”

 ちょっと興味をそそられますね。著者は、学校の協力を得て開成高校の卒業生2,800人、灘高校の卒業生2,240人にアンケート調査を実施・分析したのが本書です。また、比較を可能とするために首都圏の高校を卒業した男子大卒者にも同時期にアンケート調査を実施しています。

 アンケート調査から気になるところをみてみると、まず、卒業生の職業の中で「医師」が22.0%を占めており、一般大卒の1.0%と比較すると目立った存在になっています。次に、企業勤務者として働く卒業生の内、大企業(5,000人以上)で働くのは、一般大卒者が25.1%であるのに対して、開成・灘の卒業生は52.9%と大きく差が開いています。第3に、企業勤務者の平均年収をみると一般大卒者が782.1万円であるのに対して、開成・灘の卒業生は1,404.2万円と大きな格差が存在します。エリート養成機関と思われる開成・灘の卒業生は、概ね順当な職業人生を歩んでいるようです。

 しかし、そうでもない人も記述されています。「大学受験や就職活動で意にそぐわない選択をすることになったのは、2〜3割。そして、就業後、自分の能力を発揮することができていないと感じつつ働いている者も3割いる」とのことです。エリートに対するイメージが一致する点と異なる点が描写されており、“人生いろいろ”といったところでしょうか。

 人事の本とは視点がやや異なりますが、新卒採用・能力開発に係る人事担当者にとっては、参考になる書籍といえるかもしれません。 

 

 

著    者:濱中 淳子

出 版 社:筑摩書房

発 売 日:2016年3月

カテゴリー:新書(教育社会学)

政治主導で挑む労働の構造改革

 自民党の国会議員が執筆した書籍です。たいしたことはないだろうと思った、そこのあなた! ちょっと読んでみませんか? 私もとりあえず、くらいの気持ちで手に取った書籍ですが、現状の雇用・労働に関する問題意識をきれいに整理してくれています。特に、第4章のメンバーシップ型雇用のデメリットとメリットは以下のように書かれており、理解しやすいと思います。

 ●メンバーシップ型雇用のデメリット(4つ)

 (1)ワークライフバランスが困難

 (2)非正規雇用労働者の格差

 (3)中高年労働者の処遇

 (4)中高年齢者の再就職

 ●メンバーシップ型雇用のメリット(5つ)

 (1)若年労働者の失業率を抑えられる

 (2)労働者の職業能力を開発しやすい

 (3)労働者に対して柔軟な指揮命令をしやすい

 (4)労働者の定着やモチベーション維持に効果的

 (5)空きポストを補充しやすい

 そして、このデメリットやメリットが「誰にとってのものなのか」についても解説されており、納得させられます。たまには政治家の視点で整理された書籍を読むのも良いですね。ただ、図表が小さく読みにくい点が残念です。年をとったせいかしら・・・。 

 

 

著    者:川崎二郎、穴見陽一

出 版 社:日経BP社

発 売 日:2016年4月

カテゴリー:一般書(雇用労働)

人材覚醒経済

 「元凶は、日本の無限定正社員システム」

 この書籍のオビに書かれた文章です。過重労働や女性活躍に関する問題等については、確かにそうかもしれません。いわゆる日本の正社員システムが威力を発揮した反面、影の部分に関する指摘でしょう。著者は、無限定正社員からジョブ正社員(限定正社員)へ転換を進めることで、様々な問題を解決することができると言っています。

 著者は、内閣府に設置された「規制改革会議」で雇用ワーキンググループの座長を務めた人物です。その報告書の中で、「ジョブ型正社員」が提唱されていました。2018年問題と言われる労働契約法の無期転換の受け皿としても活用できる制度・考え方です。「ジョブ型正社員」とは、仕事の内容、勤務地、人事異動、労働時間などが限定(契約書で特定)された正社員を指します。なお、“正社員”ですので期間の定めがなく定年まで働くことが想定される社員区分です。今後、間違いなく増えるであろう「ジョブ型正社員」について、理解を深めるためにはとても参考になる書籍といえそうです。

 また、「ジョブ型正社員」だけでなく雇用・労働に関するテーマ全般について、深くなり過ぎず幅広く解説されていますので、現状の問題に関する論点整理のためにも重宝すると思います。「働き方改革」の源流に携わった著者ですので、その見解にふれておくことは人事担当者にとって有意義かもしれませ。 

 

 

著    者:鶴 光太郎

出 版 社:日本経済新聞出版社

発 売 日:2016年9月

カテゴリー:経営書(人的資源管理)

仕事と人間性 動機づけ―衛生理論の新展開

 会社にとって、“給与”は利益を上げるための手段です。

 社員にとって、“給与”は生存するための糧であり、より高い給与を欲しています。ですので、会社は給与を増額することで社員の意欲を引き出し、仕事に励んでもらうことにより収益性を高めることができます。しかし、「そんなことは、ないよ」と言った人がいます。ハーズバーグの動機づけ・衛生理論です。人に“やる気を起こさせる要因”と人を“不満にさせない要因”は、別々に存在するようです。前者が【動機づけ要因】、後者が【衛生要因】と呼ばれています。

 ハーズバーグは、【動機づけ要因】として「達成の承認」や「仕事そのもの」を挙げ、【衛生要因】として「給与」や「対人関係」を挙げています。そうだとすると、社員のモチベーションをアップさせるためには、不満を防止するための給与を増額するだけでなく、仕事に対する評価や昇進について工夫した方がよいのかもしれません。また、「衛生改善の効果は短期間しかもた」ず、「衛生は麻薬のように作用する−使えば使うほど効果が薄くなる」ともいっていますので、やはり給与の効果は限定的だとハーズバーグは、いっているのでしょう。

 この書籍は、古典の部類に属するものだと思いますが、「故きを温ねて・・・」といいますので、図書館などで一度手に取ってみるのも面白いでしょう。給与や評価制度を担当する人事担当者には参考になるかもしれませ。 

 

 

著    者:フレデリック・ハーズバーグ、北野 利信 訳

出 版 社:東洋経済新報社

発 売 日:1968年3月

カテゴリー:学術書(心理学・経営学)

日本の賃金を歴史から考える

 賃金は、誰にでも関心のあるものでしょう。現在の制度や慣行は、この瞬間にいきなり出来たわけではなく、昔からの連続した経緯が現時点につながっています。賃金の今後を考えるためには、どのように現在に至ったのかを知っておくことは重要でしょう。しかし、歴史を深く追求するのは骨が折れます。研究者ではない人事担当者にとっては、効率的に学習したいところです。

 そこで、本書の登場です。本文は、200ページを超えないシンプルな外形でありながら、広範囲にわたって記述されています。戦前戦後を通じた賃金の変遷だけでなく、雇用社会の変化を追いかけ、その位置関係を理解させてくれます。テーラーの科学的管理法やベッカーの人的資本論などにも触れ、実務家が断片的に持っている知識がつながります。この書籍を読めば、賃金の歴史について、とりあえずの部分をおさえることができるでしょう。

 また、労働法政策の専門家として有名な濱口桂一郎先生が、本書の“オビ”を書かれています。「このタイトルは過小広告! 賃金だけでなく日本の雇用の全体像を 歴史を軸に描き出した名著」とのことです。歴史解説が大好きな濱口先生の言葉だけに一読の価値はあるでしょう。

 なお、この書籍の最後に出てくる「賃金の学習を進めるためのリーディング案内」では、厳選された12の書籍が紹介されています。実務家にとっても大変参考になるでしょう。著者のすすめる12冊を読破することができれば、賃金に造詣が深いといえる人事担当者になれるかもしれませ。 

 

 

著    者:金子 良事

出 版 社:旬報社

発 売 日:2013年11月

カテゴリー:新書と学術書の中間(労働経済)

「非正規労働」を考える 〜戦後労働史の視角から

 「非正規労働には弊害もある。だからといって、非正規労働をなくせば、それですむ、というものではない。」これは、はしがきに出てくる一節です。たくさんの著作がある中で、著者が非正規労働問題を正面から取り上げた例はあまり多くないと思います。著者の問題意識は、非正規労働問題を深く吟味することなく表層的に理解する風潮にあるようです。「非正規労働問題=不当な賃金格差」という図式だけで捉えることの危うさに警鐘を鳴らしています。

 非正規労働者が存在するのは、それなりの経済合理性があるはずであり、その仕事の内容を分析することで、経済合理性の一端を確認しようとしています。非正規労働者に限る話ではありませんが、仕事の内容を明らかにするためには、“スキルマップ”が有効だと主張されています。非正規労働者といわゆる“正社員”が一つのスキルマップに記載されることで、技能の優劣や位置づけが明らかになり、不当な格差か否かの確認ができることになるでしょう。スキルマップに関心がある人にとっては、有意義な参考資料になるはずです。また、非正規労働の存在理由として一般的には「雇用調整機能」が主張されますが、著者は「人材選別機能」も重視します。非正規労働者から正社員へ登用されていく事例を通じて、長期雇用へのスクリーニング機能の有効性を主張しています。

 非正規労働問題を考える人事担当者にとっては、視点の異なる書籍に触れることで、新しい気づきを与えてくれる1冊になるかもしれません。 

 

 

著    者:小池 和男

出 版 社:名古屋大学出版会

発 売 日:2016年5月

カテゴリー:経営書(労働経済)

生涯発達の心理学

 「企業にとって中高年は不要か?」

 高年齢者雇用安定法が改正され、年金の支給開始スケジュールに呼応した65歳までの継続雇用が定着しつつあります。しかし、企業にとって定年後再雇用者の活用は改善すべき課題となっているようです。その理由の一つとして、中高年になると頭も固くなり能力が減退するという定説があるのかもしれません。そのようなネガティブ思考になってしまう時、参考になるのがこの書籍です。

 運動能力は、青年期がピークであり中高年になれば次第に衰えていくのが通常でしょう。しかし、知的能力は何歳になっても伸びていくものだ、と次のような説明がされています。

 知的能力には、流動性知能と結晶性知能の2つが存在する。流動性知能とは、図形認識や図形構成などにより測定される能力で、青年後期ないし成人期の初期にピークに達し、中高年期にかけて次第に低下していくことになる。一方、結晶性知能とは、語彙や社会的知識によって代表される能力のことで、老年期まで伸び続けていく知能と考えられている。

 この考え方に従えば、さほど大きな能力減退を気にすることなく中高年の活躍の幅を広げることができるかもしれません。中高年の能力開発や定年後再雇用者の活用を考えている人事担当者にお勧めしたいと思います。 

 

 

著    者:高橋恵子・波多野誼余夫

出 版 社:岩波書店

発 売 日:1990年12月

カテゴリー:新書(生涯発達心理学


 

 

経営学で考える

 「単純な「賃金による動機づけ」は科学的根拠のない迷信である。」

 人事担当者であれば、ハーズバーグの動機づけ−衛生理論を知っている人は多いでしょう。改めて著者に言われるまでもありません。でも、知っているのに何故か、賃金制度を重視してしまいます。著者は、次のようにも書いています。「お金には、ある種の強い副作用と常習性がある。〜やがて麻薬中毒者のように、金銭的報酬をもらい続けないと仕事に耐えられないほど、仕事を苦痛なものにしてしまう。」

 では、どうすればよいのか? 著者が再三、言い続けていることですが、「次の仕事で報いる」ことが処方箋のようです。従業員本人にとって興味深い次の仕事を担当させることに喜び=モチベーションを感じてもらい、金銭的報酬はそれに付随して少しずつ増やしていくことが重要なようです。以前の日本企業には、当り前に出来ていた手法ではないでしょうか。

 著者は、一世を風靡した書籍「虚妄の成果主義」で知られる研究者ですが、今一度、その考え方にふれることで、ヒントを得ることができるかもしれません。 

 

 

著    者:高橋 伸夫

出 版 社:有斐閣

発 売 日:2015年9月

カテゴリー:学術書(経営学)

戦後労働史からみた賃金

 著者の言いたいこと。

 けっして賃金の歴史を語りたいわけではなく、「海外で勝ち抜く賃金の方式を提議したい」と言っています。それを説明するために、まずは誤解を解く必要があるようです。それが、戦後労働史を通して日本の賃金を説明する理由です。“日本の賃金”というからには、国際社会の中での位置づけを確認する必要があるでしょう。そのため、アメリカの賃金と比較することで、日本の賃金の実態を示してくれます。日本は「職能給」であり、アメリカは「職務給」であるという根深い誤解を解消しないと議論が始まらないからです。

 日本企業の賃金には、強みがあるそうです。

 その根拠として提示されるのが、著者が昔から唱える「ブルーカラーのホワイトカラー化仮説」です。端的にいえば、技能系職種に事務系職種の賃金を適用したことが技能系職種の能力開発に大きな影響を及ぼし、生産性を向上させ、日本の優位性を形成したということでしょう。

 これらのことに異論を持たれる人事担当者もいるかもしれません。しかし、この書籍を読むことで、今までの“通念”が吹き飛ぶ可能性もあると思います。グローバルと言う前に、自分の足元を確認するためのヒントがここにありそうです。 

 

 

著    者:小池和男

出 版 社:東洋経済新報社

発 売 日:2015年9月

カテゴリー:学術書(労働経済)

Excelでできる統計データ分析の仕方と人事・賃金・評価への活かし方

 自社の賃金分析は、お済みですか?

 賃金制度を担当する人事担当者であれば、賃金の分析をしたいと思うでしょう。その時、賃金の分析を専門家の仕事だと思えば、コンサルタントにお願いするのかもしれません。しかし、著者曰く、この書籍を読むと自分でできるようになるとのことです。

 人事担当者は、普段から人事に関する個人データを扱っています。著者は、そのデータを活用することで、業務に大きく役立つと解説しています。例えば、賃金の分析を実施する場合、全社員の賃金プロット図(散布図)を作成することが多いでしょう。この図に、賃金統計から抽出した折線グラフを重ねると自社の賃金の分布と水準が手に取るようにわかります。難しそうですが、エクセル(表計算ソフト)を使用すれば、簡単に作成可能です。この書籍には、その手順が示されているのです。また、賃金分析には欠かせない「賃金構造基本統計調査」やその他の統計の使い方も教えてくれます。

 この書籍の「はじめに」では、第1に「分かりやすい」、第2に「使える」、第3に「身に付く」という3つの特徴が示されています。著者の言う通り、分かりやすく使える本ですが、身に付くかどうかは、あなた次第です。興味はあるけれど、その一歩が踏み出しにくい人にとっては、“ピッタシ”の一冊ではないでしょうか。 

 

 

著    者:深瀬 勝範

出 版 社:日本法令

発 売 日:2014年7月

カテゴリー:実務書(データ分析)

なぜ日本企業は強みを捨てるのか

 「この本は、企業の役員会への従業員代表の参加を提言する。」、そして「なんとか長期の競争の重要性を強調したい。それが、この本の志である。」

 これは、はしがきの文章です。著者のメッセージだと思います。

 労働経済界の重鎮である著者が、“長期の競争”に着目してきたことは、広く知られるところでしょう。“グローバル化”が合言葉のようにいわれる中、短期的な国際競争に生き残るため“日本企業の強み“を捨てる方向に走っているのではないか?という著者の問題意識が、この書籍につながっているようです。

 一方、上場企業ではガバナンス確保のため社外取締役が注目の的になっています。某経済新聞によると人材不足とのことです。いくら見識の高い人材とはいっても、通常、社外取締役は非常勤です。そうであれば、情報収集について会社の中で仕事をする人に勝ることは難しいかもしれません。そこで、従業員代表の登場となります。例えば、労使協定の締結等のため事業場の過半数を代表する従業員は、社外取締役とは異なり会社から指名されるわけではありません。そして、自分や家族の生活を支えるためには、短期だけでなく長期にわたって会社に繁栄してもらわねばなりません。長期におよぶ経営を監督するという点では、適している存在だと言えるでしょう。また、EUでは従業員代表が参加する会議体(監査役会と訳されます)が、取締役の任命権を持ち、経営を監督してきたそうです。

 世の中の通念に疑問を呈し、戦い続けてきた著者ならではの書籍といえるでしょう。某経済新聞の紙面に踊るキャッチ・フレーズだけでなく、物事の本質に迫りたい人事屋にとっては、あの”小池節”に接するよい機会になるかもしれません

 

 

著    者:小池 和男

出 版 社:日本経済新聞出版社

発 売 日:2015年2月

カテゴリー:経営書(労働経済)

労働時間の経済分析 〜超高齢社会の働き方を展望する

 日本人は、働きすぎなのか?

 「そもそも「働きすぎ」という言葉は感覚的なもの」だと著者は説明します。感覚的なものである以上、実態を確認しなければなりません。そこで、様々な統計分析から解説をしてくれるのが、この書籍のお役目ということになります。本書では、各章の最初で「分析の結果」を端的にまとめています。以下、特に気になった部分です。

 第1章:「分析の結果、1980年代末以降、1人当たりの平均労働時間は趨勢的に減少しているが、その要因はパートタイム雇用者比率の上昇と時短政策に伴う週休二日制の普及である」、「さらに、1990年代後半から2000年代初めには、壮年男性正規雇用者を中心に不況期に労働時間が増加するという特異な現象が観察される」

 第3章:「分析の結果、1990年代から2000年代にかけての日本では、日中に働く人の割合が低下する一方で、深夜や早朝の時間帯に働く人の割合が趨勢的に増加しており、この傾向が特に非正規雇用者に顕著に観察される」

 第6章:「分析の結果、〜欧州に赴任した日本人の労働時間は、現地の同僚の働き方から影響を受け、有意に減少していた」

 第8章:ワーク・ライフ・バランス施策について、「分析の結果、どのような企業でも施策の導入によって生産性が上昇するわけではなく、逆に、中小企業などでは、施策の導入によって生産性が低下してしまうケースがある」

 第10章:「分析の結果、長時間労働、とりわけサービス残業という金銭対価のない労働時間が長くなると、労働者のメンタルヘルスが悪化する危険性が高くなる」

 この書籍は、データから数量的に論証していきますので説得性が高いのですが、統計分析を多用しているため、多少難解です。そうであっても、感覚的に日本人の働き方を捉えていた人事担当者にとっては、多くのことを学ばせてくれるでしょう。「第57回 日経・経済図書文化賞」を受賞していることもあり、日本人の働き方を考えるためには、おさえておくべき書籍といえそうです。 

 

 

著    者:山本 勲黒田 祥子

出 版 社:日本経済新聞出版社

発 売 日:2014年4月

カテゴリー:学術書(労働経済)

高齢社員の人事管理

 「 「福祉雇用型」人事管理の限界は明らかである。 」

 著者の言葉です。

 高齢社員に対する「福祉雇用型」人事管理とは、法的規制から仕方なく65歳まで継続雇用を保障することです。要するに、高齢社員に対して高い成果を期待することはなく、在職老齢年金等を活用することで、人件費をなるべく低く抑える人事政策を指します。そのような施策をとれば、当然に働く高齢社員の“やる気”を引き出すことはできません。

 また、会社によって異なると著者は前置きしながら、「ことの重要性」を強調しています。「ことの重要性」とは、「高齢社員という特定の社員集団が経営にとってどの程度重要な存在であるのか」という問題です。2030年には、5人に1人が60歳以上になる環境下で、高齢社員を活用しなければならないという「ことの重要性」は、会社を選んではくれないでしょう。つまり、全ての会社にとって高齢社員を活用する「ことの重要性」は高いことになります。

 そして、例外なく関心事項であろう賃金制度について、賃金(従業員への投資)と会社への貢献(回収)の関係から、今後とりうる賃金モデルを著者は提案してくれます。今後、定年延長を検討する会社にとっては、たいへん参考になる賃金モデルだと思います。

 定年延長は、まだ先のことと考える会社が多いかもしれませんが、「高齢社員の人事管理」を考えるためには、必要な1冊といえるかもしれません。 

 

 

著    者:今野 浩一郎

出 版 社:中央経済社

発 売 日:2014年9月

カテゴリー:実務書(人的資源管理)

女性が活躍する会社

 会社にとって重要なのは、「女性の活躍」ではなく、「ヒトが活躍すること」のはずです。女性の管理職比率が30%になっても、会社の目標を達成できなければ意味がありません。そう思っているビジネス・パーソンに読んで欲しい書籍です。そして、その思いは良い方向に裏切られることでしょう。この書籍は、リクルートワークス研究所の2人の研究者が、それぞれ分担して執筆しています。

 まず、第1章「女性育成の常識は間違いだらけ」、第4章「この機会に労働時間を見直す」、第5章「新人女性を確実にリーダーに育てるシナリオ」について、石原直子氏が執筆しています。これらの章には、キャリア開発のためには女性を甘やかせてはならないことや、男女にかかわらず労働時間管理の基本を徹底することなどが述べられており、実務でも参考になる内容が書かれていると思います。石原氏の担当は、「女性が活躍する会社」を作るための具体論に重きが置かれているようです。

 次に、第2章「女性活躍推進が経営戦略の最重要テーマに」、第3章「数値目標は是か非か」、第6章「女性活躍推進は女性のためにあらず」は、大久保幸夫氏による執筆です。これらの章には、女性の活躍推進が必要な理由と、それがこれからの企業戦略のために重要であることなどが書かれています。また、女性の管理職比率という議論の多いテーマについて、ヨーロッパの事例などをもとに、その必要性をわかりやすく説明してくれます。大久保氏の担当は、「女性が活躍する会社」が必要とされる全体的背景の解説に重きが置かれているようです。

 この書籍には、「女性の活躍」を美化するのではなく、“あたりまえ”のことが書かれていると思います。女性の活躍推進は、“女性のため”だけではなく、男性を含めた企業戦略にとって必要なものだと気付かされるのです。あらためて、“あなたの働き方”を考えるきっかけになるかもしれません。

(これは、「人事労務実務のQ&A」No.56に載ったものです。)

 

 

著    者:大久保幸夫、石原直子

出 版 社:日本経済新聞出版社

発 売 日:2014年10月

カテゴリー:新書(女性の活用)

「就活」と日本社会 〜平等幻想を超えて

 「もう、平等という幻想にしがみつくのはやめよう。 〜平等ではないことを受け入れることで、弱者は弱者なりの生存戦略を考えようではないか。」

 この書籍の最後の言葉です。そして、誠実な提案だと思います。

 新卒一括採用は、「1870年代に日本に大学ができ、もともと、学界や官界を目指していた層に、三菱がアプローチし、慶應義塾大学の学生を採用したのが始まり」だそうです。約150年の歴史があることになります。このような歴史もたどりながら、著者は、新卒一括採用のメリットとデメリットを確認し、先行研究をレビューした結果をコンパクトに提供してくれます。新卒一括採用に係わる人事担当者にとっては、とても有意義な参考書になるでしょう。

 また、著者のいう「弱者」には、2人いるようです。

 まず、一人目は一流大学(高偏差値)ではない学校に通う学生です。たくさんの大企業に応募し選抜に漏れるメカニズムを紹介し、平等幻想を捨てた上で弱者としての戦い方を教えてくれます。もう一人の「弱者」は、中小企業のようです。就職ビジネス会社の提案するままに採用活動を展開しても、結局、大企業に近い手法となってしまうので、ロスが大きいと言っているように感じます。

 諸外国には見られない日本の新卒一括採用の存在を、あらためて考えるよいきっかけを与えてくれる書籍だと思います

 

 

著    者:常見 陽平

出 版 社:NHK出版

発 売 日:2015年1月

カテゴリー:学術書と実務書の中間(教育社会学

 

 

 

検証・学歴の効用

 大学を卒業することに意味はない」 わけがない、

ということが書かれています。

 高校から大学への進学率が高まり「大学全入時代」と言われる中、その学歴の効用が疑問視されてきました。しかし、通念に反する実態を統計や調査から教えてくれています。

 まず、賃金構造基本統計調査を用いて「大卒独り勝ち状態」の存在を解説しています。1975年時点では、「中卒〜高卒〜高専・短大卒〜大卒」の各学歴間の賃金格差はほぼ等間隔であったものが、2010年時点では、「高専・短大卒〜大卒」間に大差が開いており、大学卒という学歴の効用が際立って高いことを教えてくれます。

 また、ちょっと変わったところでは、女性にとっての経済的効用という視点で、「正規社員・非正規社員・結婚」という3つの領域において高等教育の効用を分析しています。これによると、専修学校卒は非正規労働者として働いた場合の効用が大きく、短大卒では結婚に関する効用が大きいそうです。そして、「大学は、女子にとってどのような選択をしようとも経済面での有利さをもたらしてくれる「オールマイティー」な教育機会」を与えてくれるようです。

 この書籍では、重回帰分析を用いて分析する場面が登場するので、多少馴染みにくいところがあるかもしれませんが、イメージだけで捉えていた「学歴の効用」について、“気づき”を与えてくれるでしょう。労働政策研究・研修機構の「労働関係図書優秀賞」も受賞しており、採用担当者にとってマークすべき書籍といえるかもしれません。

 

 

著    者:濱中 淳子

出 版 社:勁草書房

発 売 日:2013年6月

カテゴリー:学術書(教育社会学)

アメリカ自動車産業 〜競争力復活をもたらした現場改革

 「アメリカの自動車産業では、〜「職務給」の徹底により、能力主義の導入ができないことがやはり職場改革の障害となっているのである。」(P197)

 これは、ブルーカラーのお話です。日本は“査定つき定期昇給”という能力主義、アメリカは先任権という年功序列になっていることが書かれています。このことは、知っている人は当然に知っている、知らない人は意外に知らない事実です。

 この書籍を読んでいると「現代日本の報酬制度の最大の特徴は、ブルーカラーのホワイトカラー化」だと、労働経済学の重鎮である小池和男先生が、著書である『仕事の経済学』で述べていたことを思い出します。「ブルーカラーのホワイトカラー化」とは、本来であればホワイトカラーに適用すべき“査定つき定期昇給”という能力主義を、ブルーカラーに対しても日本が実施してきたことを指しています。反対にいうと、欧米では職務給であるが故にその“査定つき定期昇給”がブルーカラーにはあまり適用されてこなかったということです。

 著者は、このような歴史的経緯も踏まえながら、アメリカの自動車産業の代表であったビッグ3の最近の状況を交えてわかりやすく解説してくれています。数値の上では、GMの完全復活が脚光を浴びているようですが、製造現場では試行錯誤を繰り返しており、日本の自動車産業に追いつけない様子も描かれています。

 自動車産業を通して、日米の仕事に対する考え方の違いも理解できとても勉強になります。自動車産業に関係する人事担当者にとっては、外せない一冊といえるかもしれません。

 

 

著    者:篠原 健一

出 版 社:中央公論新社

発 売 日:2014年7月

カテゴリー:新書(労働経済)

日本の雇用と中高年

 前回は“若者”、今回は“中高年”です。

 これで新書も4冊目になりました。著者である濱口桂一郎先生は、執筆や講演活動に止まらず、テレビやラジオにまで頻繁に登場しています。その主張は一貫しており、そろそろ飽きてきた人がいるかもしれないと心配になるほどハイペースで続く情報発信力に脱帽です。今回も欧米と対比することで、日本の特色を分かりやすく解説してくれています。

 最終章である第5章には、次の見出しが続いています。

 「「ジョブ型正社員」とは実は中高年救済策である」

 「途中からノンエリートという第三の道」

 「継続雇用の矛盾を解消するジョブ型正社員」

 この見出しからお分かりいただける通り、キーワードは前作に続き「ジョブ型正社員」です。前作の『若者と労働』で、“若者”の雇用問題を解決する処方箋とされた「ジョブ型正社員」は、“中高年”の雇用問題を解決する処方箋にもなるそうです。この「ジョブ型正社員」は、労働契約法に基づく“無期転換社員”や、高年齢者雇用安定法に基づく“継続雇用”に対する考え方としても大変参考になるでしょう。

 これからの制度を考えなければならない人事担当者にお薦めしたいと思います

 

 

著    者:濱口桂一郎

出 版 社:筑摩書房

発 売 日:2014年5月

カテゴリー:新書(雇用システム)

〈働く〉は、これから 〜成熟社会の労働を考える

 この書籍は、「成熟社会の労働哲学研究会」から生まれた成果を集めたものだそうです。<働く>をテーマにいくつかの学問ジャンルの研究者が論考を寄せたもので、経済学だけでなく哲学の要素も入っているためかやや難解に感じる部分もあります。第2章は、「地に足の着いた雇用改革を」と題して、慶應義塾大学の清家先生が担当しています。統計データを交えながら、分かりやすくこれからの人事制度改革の処方箋が記されています。この章は、人事担当者にとって大変参考になるでしょう。

 もう一つ気になるのが、法政大学の藤村先生が第4章で述べている次の内容です。

 「頼まれたことは何でも引き受けること」

 こんなことをしていたら仕事にならないのでは? しかし、キャリアを進めるためには非常に重要なことのような気がします。忙しいのは誰しも同じです。できること、できないことがあるかもしれませんが、こういった姿勢を持つことが自分を高めてくれる具体例なのではないでしょうか。この記述自体は、高齢者が働き続けるための重要な一つだそうですが、全ての<働く>人にとって重要なフレーズと言えるかもしれません。

 実務書から離れて素朴に<働く>を考える。忙しすぎる人事担当者にとって一服の清涼剤になるかも・・・

 

 

著    者:猪木 武徳 編

出 版 社:岩波書店

発 売 日:2014年2月

カテゴリー:学術書と経営書の中間(雇用労働)

雇用再生 〜持続可能な働き方を考える

 労働経済でここまでわかりやすいのは、珍しいと思います。

 著者は高名な労働経済学者であり、この書籍は当然に労働経済学をベースに書かれています。でも、私たちが使っている普通の日本語を用いて、どうしてこんなに簡単になめらかに説明することができるのか不思議です。例えば、雇用の流動性や解雇規制について、この書籍の104ページには次の記述があります。

 「わざわざ解雇制限の緩和などをしなくても、衰退産業や衰退企業に見切りをつける人は当然のことながら、粛々と転職しているのである。流動性が低いのは解雇規制が厳しいからではなく、行く先によりよい労働条件の企業がないからというほうがむしろ正しいと考えるべきだろう。」

 言われてみればその通りです。ですが、有識者と言われる人たちがテレビに出演して、日本の問題は雇用の流動性が低いことであり、解雇規制が厳しいことにある、と私たちはよく聞かされています。日本の雇用問題は何なのか、この書籍を通じて問題の本質に気づかされるかもしれません。

 何か、スッキリする本なのです。人事担当者であれば、外せない一冊になるかもしれません

 

著    者:清家 篤

出 版 社:NHK出版

発 売 日:2013年11月

カテゴリー:新書と学術書の中間(労働経済)

活用労働統計 2017

 「今年の定期昇給は何%か?」 人事担当者であれば、気になるところです。

 今年と言うからには、今までを確認しておかなければなりません。そんな時、ハンディで必要なデータを揃えているのが、この書籍です。過去50年以上にわたる毎年の賃上げ状況について、たった1ページを見るだけで把握することができます。そして、大まかではありますが、業種別、規模別又は調査機関別に確認することも可能です。その他にも、雇用・労働に関するデータが盛りだくさんです。

 巻末の「用語の解説」は、知識の整理にも大変役立ちます。「名目賃金」と「実質賃金」の違いや、「労働力人口」や「完全失業者」などを図解することで、普段何気なく使っている用語について、簡潔に説明してくれています。同じく巻末の「主要統計一覧」では、どのような調査が存在し、どの調査を調べればよいか、当りをつけるのに重宝します。

 とりあえず知りたいことが何でも揃う。そして小さく軽くて扱いやすい。人事担当者にとってハンディなデータ資料集の決定版といえるでしょう。

 

 

著    者:生産性労働情報センター 編

出 版 社:日本生産性本部 生産性労働情報センター

発 売 日:2017年1月

カテゴリー:資料集(雇用、労働など)

仕事と組織の寓話集 〜フクロウの智恵

 これは、まさしく“人事の本”です。

 まず、寓話を通して人事を語ること自体が、かなり変わっていると言えるでしょう。そして、この書籍からにじみ出る博識ぶりに驚かされるのは筆者だけではないはずです。この中には、「毛虫、カエル、フクロウ」などの動物や「シーザー、ベートーベン、アガメムノン、首狩り族」まで登場します。皮肉たっぷりに書いてあるので、読み終えた後、“ニヤッ”とすることになるでしょう。本当のことがたくさん書いてあるからかもしれません。

 「口でも稼げる学者は少ないのです。」

 冗談も入っているとは思いますが、労働経済学の重鎮である小池和男先生が、著者である川喜多先生を評して、かつて、そうおっしゃったのを覚えています。その軽快な語り口が、“そのまま本になったような感じ”の書籍です。不真面目なようで、そうではない。学術書でも実務書でもない。川喜多先生だからこそ書ける不思議な世界が、ここにあります。

 変わった本ではありますが、人事担当者にとって“そうかもしれない”と納得させられる書籍になる可能性は高いと思います。

 

 

著    者:川喜多 喬

出 版 社:キューズ新翠舎出版

発 売 日:2013年10月

カテゴリー:分かりません

人事経済学と成果主義

 “年功賃金は、お好みに合いますか?”

 この書籍の31ページには、年功賃金の選好度に関する次のアンケート調査の結果が記述されています。「5年間で総額1500万円の賃金をもらうときに、どのようなもらい方を選ぶか」の問いに対して、「実は過半数の人が〜年功賃金を選んでいる。」のだそうです。その理由として、「生活水準を上げていくことが楽しみで、そういう生活費の変化のパターンを選びたいから」という解釈が可能だとのことです(大竹論文)。

 また、15ページには、「どのように評価するか2 : 絶対評価vs相対評価」(樋口論文)など実務的なテーマもあり、人事担当者にとっては、興味深いものがたくさん載っています。

 この書籍は、“人事”を経済学の視点から捉えた論文集です。経済学がベースとなっているので、多少難解なところもありますが、日頃、人事担当者が“はだ”で感じているものごとを論理的に解説してくれるので、とても面白く読むことができます。

 実務からちょっと離れて勉強してみたくなった人事担当者にお薦めしたいと思います。

 

 

著    者:樋口美雄、八代尚宏、日本経済研究センター 編著

出 版 社:日本評論社

発 売 日:2006年6月

カテゴリー:学術書(人事経済学)

わかりやすい労働統計の見方・使い方

 労働統計って、使いますか?

 今は昔と違って、様々な統計がパソコンにダウンロードできるようになりました。居ながらにして無料で使える膨大なデータがありながら使わないのはもったいないです。しかし、統計を使うためには予備知識が必要です。その予備知識を身に着けるため、平易に書かれたものが本書です。労働統計にもたくさんありますが、知りたいことが調査されているのか、されているとしてどの統計に当たったら良いのか、この書籍には、そういうことが載っています。

 最近では、実務書でもマンガによる解説本がたくさん出ています。そこまで、くだけた体裁ではありませんが、大学教員の“おじさん”と、OLの“さおり”が登場し、会話形式で解説してくれますので、統計の本という雰囲気はあまり感じません。また、自社の賃金を分析するための賃金プロット図の作り方まで載っていますので、実務に大変役立つでしょう。

 統計は好きではないが、半分興味を感じる。そんな人事担当者にお薦めします。

 

 

著    者:古田 裕繁

出 版 社:経営書院

発 売 日:2010年10月

カテゴリー:実務書(統計)

日本労使関係史 1853-2010

 熟練の人事担当者にお薦めします。

 この書籍は、1853年(ペリー来航の年)から2010年(現代)までの労使関係について書かれたものです。労使関係の歴史書だからといって、今の人事の仕事とは関係がない、ということではなさそうです。この中には、人事担当者が知っておくべき“日本の雇用システム”の成り立ちが登場します。

 例えば、“年功賃金”や“終身雇用”は、最初から存在したものではなく、日本が近代化する過程で根付いたものであること、生産労働者が人間として平等に扱われたいと望み、企業の“メンバーシップ”を獲得しようとしたこと、などが詳細に書かれています。また、“メンバーシップ型社員”という言葉の生みの親である濱口桂一郎先生の著作 『若者と労働』の中で、その言葉の出所だと名指しされている書籍でもあります。

 内容が濃く読破するのに少々根気が必要かもしれませんが、人事の仕事について研鑽を重ねてきた方であれば、ご自身の知識を整理するために非常に役立つ書物といえるでしょう。

 

 

著    者:アンドルー・ゴードン 著/二村一夫 訳

出 版 社:岩波書店

発 売 日:2012年8月

カテゴリー:学術書(労使関係史)

若者と労働 〜「入社」の仕組みから解きほぐす

 「感情論を捨て、ここから議論を始めよう。」 表紙をめくると出てくる文章です。

 著者である“hamachan先生”こと濱口先生は、『日本の雇用と労働法』の中で、メンバーシップ型とジョブ型を対比して日本の雇用システムを解説してくれましたが、今回は若年者雇用を切り口として、議論の前提を整理してくれています。

 メンバーシップ型雇用のルーツとして、まずは田中 博秀先生の『現代雇用論』から、「日本の企業の人事担当者は、(中略)〜理解していない」と引用し、専門家である人事の中にも昔から多くの誤解が存在することを示唆しています。人事担当者であれば、聞き捨てならない言葉でしょう。この書籍の中で解説される“社員、入社、職業紹介”など、普段何気なく使っている言葉を深く考えていくと誤解の元にたどり着く、ということかもしれません。

 全ての働く人にとって“バラ色”であるかは別の問題でしょうが、この書籍で結論として主張される「「ジョブ型正社員」という第三の雇用類型を確立していくこと」は、多くの問題を解決することになり、現状を改革する有力な処方箋だということに異論をはさめる人は少ないのではないでしょうか。

 おそらく到来するであろう3つの雇用形態(メンバーシップ型正社員、ジョブ型正社員、有期雇用社員)をどのように活かしていくのかが、これからの人事担当者の課題となるのかもしれません。この課題を表層的な議論で終わらせないよう現状を正確に認識し考えるために有益な書物といえるでしょう。

 

 

著    者:濱口 桂一郎

出 版 社:中央公論新社

発 売 日:2013年8月

カテゴリー:新書(雇用システム)

組織デザイン

 組織図、間違っていませんか?

 部署の名称はいろいろでしょうがチェック&バランスの観点から、人事部は社員の配置、経営企画室は組織の立案、という業務分掌をお持ちの会社もたくさんあるのではないでしょうか。この分担からすると人事の直轄業務ではないかもしれませんが、人事異動をつかさどる部署としては、“組織図”に関する見識は必須のものといえるでしょう。

 この書籍は、まず「組織と呼ばれるものの特徴は、基本的に分業と調整の2つである。」とし、分業とは、「垂直分業、水平分業、機能別分業、並行分業、である。」というように、そもそも組織とは“何か”の知識を与えてくれます。また、組織形態の類型について、機能別組織、事業部別組織、マトリックス組織の3大形態として整理し、その特徴から、組織をどのようにデザインすれば良いかも理解させてくれます。

 組織構造を学ぶ基本書として広くお薦めできる1冊だと思われます。

 

 

著    者:沼上  幹

出 版 社:日本経済新聞社

発 売 日:2004年6月

カテゴリー:新書(組織論)

正社員消滅時代の人事改革 〜制約社員を戦力化する仕組みづくり

 正社員は、消滅しないでしょう。

 「正社員消滅時代の人事改革」とは、オーバーなタイトルを付けたものだと感心します。ですが、今まで通りの正社員制度では通用しなくなるのも事実のようです。

 法律面では、労働契約法が改正され“期間の定めのある非正規労働者”から“無期転換社員”が誕生することになります。一方、勤務地や職種の限定などを持つ“限定正社員” を増やしていこうという政府の方向性もあります。今後このような“多様な正社員”が増えてくれば、現在とは異なる状況が生まれるでしょう。この書籍の中で、今野先生の言う“制約社員”とは、政府の規制改革会議で“ジョブ型正社員”と呼ばれるものと非常によく似ています。研究者の間では正社員改革の方向性は一致しているようです。

 この書籍では“これからの賃金プロファイル”のような具体的な内容に踏み込み、想定されるモデルを提示している点でも優れていると思われます。今後、社員区分の制度を検討しなければならない人事担当者にヒントを与えてくれる1冊と言えそうです。

 

 

著    者:今野 浩一郎

出 版 社:日本経済新聞出版社

発 売 日:2012年12月

カテゴリー:学術書(人事管理)

現代雇用論

 “メンバーシップ型” 雇用契約のルーツが、ここにあります。

 日本型雇用システムの本質は、“職務の限定のない企業のメンバーになるための雇用契約”にあると解説する“hamachan先生”こと濱口桂一郎先生が、“限定正社員”などの議論において注目の的になっています。濱口先生は “メンバーシップ型” と “ジョブ型” という言葉を用いて日本型雇用システムを分かりやすく解説してくれますが、その考え方自体はこの書籍の中にあり、自分のオリジナルではないと公言されています。

 タイトルである「現代雇用論」は、30年以上前の“現代”ですが、「労働力人口の高齢化」や「第3次産業の拡大による非正規雇用」にフォーカスしており、30年後の未来人である私たちから見れば、ある意味、予言書を読んでいるようなものかもしれません。

 今後、展開されるであろう “限定正社員” を含めた社員区分を考えていかなければならない人事担当者にとっては、足元を固めてくれる1冊と言えそうです。

 

 現代雇用論 (1980年)      著    者:田中 博秀

                    出 版 社:日本労働協会

                    発 売 日:1980年6月

                    カテゴリー:学術書(労働経済学)


  

コア・テキスト 人的資源管理

 新人用のテキストとしていかがでしょうか?

 経営学の領域を細分化し丁寧に一つひとつを扱うテキストとしてシリーズ化された中の1冊で、人的資源管理分野を担当しています。経営学を学ぶため学生向けに書かれたテキストですが、それこそ新卒入社で人事に配属された新人にはうってつけの書籍です。

 「第1章 企業経営における人的資源管理の役割」では、テーラーの科学的管理法から歴史をたどり、人事部の役割まで解説してくれています。以下の章構成は、

 第2章 採用管理

 第3章 評価体系と報酬

 第4章 配置・異動・昇進

 第5章 人材育成およびキャリア開発

 第6章 労働時間と就業環境

 第7章 退職管理

 第8章 これからを拓く人的資源管理

となっており、人事の扱う仕事を網羅しているといっても過言ではありません。

 平易な文章での解説や重要用語を青色文字で協調する工夫もされており、新人にイメージをもってもらうのに大変役立ちます。また、人事部内での勉強会のテキストとしても有益な書籍といえるでしょう。

 

 

著    者:安藤 史江

出 版 社:新世社

発 売 日:2008年11月

カテゴリー:学術書(人的資源管理)

もの造りの技能 〜自動車産業の職場で

 “スキル・マップ”は、導入済みですか?

 製造業であれば、“ピン”とくるこの言葉でも、その他の産業ではあまり馴染みがないかもしれません。スキル・マップとは“仕事表”とも呼ばれますが、社員の技能を開発するためのツールといって良いのではないでしょうか。この書籍の中に登場するスキル・マップは、自動車産業の職場で活用されているものですが、縦軸に社員の氏名、横軸に製造工程をとったマトリックスの中に、社員それぞれの技能レベルを記してあります。(もちろんサンプルですが)

 こういった資料は、なかなか社外には公表されないことが普通でしょうから、これからスキル・マップを作ろうと思う企業にとっては、大変貴重な資料といえるでしょう。また、技能職の等級格付けに使用できる記述もあり、人事制度を改定する場合にも有力な手がかりを提供してくれます。

 製造業でなくとも大変参考になる書籍ですが、もし、御社が製造業に関連した産業であれば、読み過ごすことのできない貴重な書籍となるでしょう。

 

 

著    者:小池 和男、中馬 宏之、 太田 聡一

出 版 社:東洋経済新報社

発 売 日:2001年1月

カテゴリー:学術書(労働経済)

能力主義管理 〜その理論と実践

 人事制度を検討している人事担当者にお薦めします。

 「今日においては企業の属する世界が、急速にインターナショナルな拡がりを示しているので、人事管理面において、インターナショナルな場でも十分通用し得る様式を求めていかなければならない。すなわち人事管理国際競争において十分競争力をもつものでなければならない。」 人事管理に関する記述について、この書籍の77ページから引用しました。 

 40年以上前(昭和44年2月25日)に発行された書籍ですので、グローバル化の必要性が今に始まったものではないことがわかります。この書籍は名著として名高く、それゆえ平成13年4月に32年の時を経て復刻されたものです。

 年功制や職能給・職務給など、現在でも議論となるトピックを扱い、能力主義管理の重要性を説いていますが、人事のテーマは昔から大きく変わっていないのかもしれません。人事制度を構築する場合には、様々な局面で悩むことがあると思いますが、昨今のトレンドに惑わされないよう“足元を見つめ直す”のに役立ってくれるのではないでしょうか。

 往年の人事担当者からすれば、日本の人事制度史を思い出すことができるリカレント・ヒッツと言えるかもしれません。

 

 

著    者:日経連能力主義管理研究会

出 版 社:日本経団連出版

発 売 日:2001年4月

カテゴリー:実務書(人事管理)

日本産業社会の「神話」 〜経済自虐史観をただす

 「あなたの誤解が日本を衰退させる!」

 この本の“オビ”に書かれたキャッチコピーです。私たちが当然と思っていること、それは迷信であり、“他国の冷静、的確な状況把握”、“他国と日本を直接比較した研究結果の活用”が重要だと、著者である小池先生は述べています。

 この書籍の論点からすると中心ではないかもしれませんが、人事担当者の立場からすると、次の神話は気になるところでしょう。

 ●日本の人事評価は中心化傾向が強すぎるが、アメリカの人事評価はメリハリが効いている、という神話(p.35)。

 ●日本の賃金は属人給だが、アメリカの賃金は職務給である、という神話(p.96)。

 これらの内容は、著者が述べるように、“証拠がやや足りない”部分もあるのかもしれませんが、それでも十分に説得力を持って語りかけてくれます。日本にはびこる神話を批判的に見つめ直す良い視点を与えてくれる書籍ではないでしょうか。また、平易な文章で書かれており、労働経済学を専門としない人でも気軽に読むことができる本でもあります。

 今まで神話に煩わされてきた人事担当者にとっては、“痛快時代劇?”を見るように、スッキリとする一冊になるかもしれません。

 

著    者:小池 和男

出 版 社:日本経済新聞出版社

発 売 日:2009年2月

カテゴリー:経営書(労働経済)

大卒就職の社会学 〜データからみる変化

 “シューカツ”、大変ですよね。

 新卒採用は人事担当者にとって大変な仕事ですが、学生さんからすれば、人生の大勝負。“勝ち組”にならなければいけない、と思っている学生さんも多いのではないでしょうか。

 65歳までの継続雇用が進む中、20歳代の就職は厳しさを増すばかりですが、いつ頃から就職活動は大変になったのでしょうか?また、どういった学生さんが大変なのでしょうか?それとも以前と変化していない部分もあるのでしょうか?この本は、そういった素朴な疑問に対して、様々なデータに基づき解説してくれます。

 学業に専念できる環境整備として、就職活動の解禁日を遅くすることが重要だと、学校や企業から提言されていますが、昨今、この就職協定のタイムスケジュールが変動しています。人事担当者であれば、こういった採用スケジュールで悩むことでしょう。この書籍の中では、就職活動のタイムスケジュールにスポットを当て、学校ブランド群別に分析しているところが面白く分かりやすくなっています。学校のブランド力が内定に関係があるかどうかの一端をうかがい知ることができます。

 採用活動を実施する側の人間として、アカデミックに“シューカツ”を考えたい人事担当者にお薦めしたいと思います。

 

著    者:苅谷 剛彦/本田 由紀 編

出 版 社:東京大学出版会

発 売 日:2010年3月

カテゴリー:学術書(教育社会学)

人的資源管理論 【理論と制度】 第2版

 この書籍の164ページ。

 『 「全体から逆算して項目評定の鉛筆を舐める」管理職が28.1%と3割近くもいる 』 、 『 評価制度の「精緻化」によって評価の「精度」を上げられるという「信仰」がある 』  

 どちらも、“あるある”と言いたくなりそうな内容です。

 人的資源管理は、略してHRM(Human Resource Management)と表現されることも多いと思いますが、日本語がアルファベットやカタカナになると“カッコ良さ”がつきまとい、実態と乖離したニュアンスを醸し出すことがあります。著者である八代先生は、“人的資源管理”と“労務管理”や“人事管理”に違いはないというスタンスで本書を書かれており、その点からも人事担当者が正面から向き合うべき内容のオンパレードです。

 大学の学部生のテキストとして執筆されたそうですが、それだけでは”もったいない”。実務を経験した中堅人事担当者が、ご自身の知識を整理するために役立つ書物と言えそうです。

 

著    者:八代 充史

出 版 社:中央経済社

発 売 日:2014年2月

カテゴリー:学術書(人的資源管理論)

賃金とは何か―戦後日本の人事・賃金制度史

 「職能資格制度」の生みの親。

 楠田丘と言えば、泣く子も黙る賃金の専門家。齢を重ねても衰えを知らない鉄人です。たくさんの人事担当者が楠田理論を学び、育ったことでしょう。その楠田先生の伝記を通じて、“賃金とは何か”に迫る歴史本とも言える書籍です。

 皆さんは、オーラルヒストリーって、ご存知ですか? オーラル=口述、ヒストリー=歴史で、ヒアリングを通じて政策情報に関する遺産を学問的に後世へ伝えるために、実施されている学術的プロジェクトです。この本は、研究者が専門家にヒアリングをした結果を文章に残し、研究活動に役立てていこうという試みなのです。

 このオーラルヒストリーという手法をもって、第二次世界大戦後の日本の人事・賃金制度がどのように変化していったかを、生き字引である楠田先生の記憶を辿り明らかにしていくことで、手に取るように当時の状況を把握することができます。

 賃金の歴史を学びたい若手人事担当者、または、楠田理論と共にキャリアを重ねた人事担当者が自分の職業人生を振り返るためにも、有意義な書物だと思います。

 

 

著    者:楠田 丘

出 版 社:中央経済社

発 売 日:2007年4月

カテゴリー:学術書(オーラルヒストリー)

リーダーシップ入門

 “リーダーシップ論の第一人者” でしょう。

 著者の金井寿宏先生は、メディアに登場することも多い“売れっ子”研究者ですので、ご存知の方も多いと思います。高名なエドガー=シャインのキャリア論の伝承者でもあり、研修などで“キャリア・アンカー”を実際に経験された方もいらっしゃるでしょう。

 リーダーシップ論といえば、百花繚乱。たくさんの研究者が、様々な考え方を発表してきています。例えば、PM理論。午前と午後のことではありません。そんなレベルから、文字通り入門したい方には、うってつけの1冊です。

 この本の中では、様々なリーダーシップについて類型が整理されており、短時間でたくさんの考え方に触れることができます。リーダーシップ論は、つかみどころがなく、困っている人も多いかもしれませんが、そういう時にこの本を読むと、何となくリーダーシップ論の共通性を感じることができるかもしれません。

 マネジメントやリーダーシップに関する研修を企画する人事担当者であれば、入門編として手に取ってみるのも良いと思います。

 

著    者:金井 寿宏

出 版 社:日本経済新聞出版社

発 売 日:2005年3月

カテゴリー:新書(リーダーシップ論)

Excelで簡単 やさしい人事統計学

 “エクセルって使えますか?

 総ページ数149ページ。その薄さのおかげで、カバンに入れても邪魔になりません。数式があまり出てこない代わりに、エクセルの操作画面の説明が出てきます。要するに、パソコンが使える人なら理解することができます。

 統計というと難しくてあまり仕事に関係のないもの。そう思っている人も多いのではないでしょうか。使わなくても人事の仕事はできますが、使えると仕事がはかどるツールになってくれるかもしれません。

 人事担当者は、研究者が欲しくてもなかなか手に入らない自社の賃金データという良質なデータを持っています。それを活用しないのは、もったいないです。この本は、自社の賃金を分析するために、賃金構造基本統計調査など公表されている統計も紹介してくれますし、決して統計全般を説明するのではなく、ピンポイントで人事担当者が必要になる基本中の基本に限って説明してくれています。

 統計の入門書というよりは、人事担当者のための実務書であり、統計を理解するよりも使えればよいと考える実務家向きの書籍だといえるでしょう。 

 

 

著    者:大阪大学大学院国際公共政策研究科人事統計解析センター

出 版 社:日本経団連出版

発 売 日:20068

カテゴリー:実務書(統計学)

人材を活かす企業  「人材」と「利益」の方程式

 フェファー先生、“なるほど”です。

 「市場から買い入れたもので競争力の維持や大きな成功を実現できない。自社が買えるものは、他社も買えるからである。」 つまり、人材について言えば、人材育成なくして企業は差別化できないし、競争力は伸びないのです。この部分だけでも人材育成の必要性や重要性を痛感させられます。また、賃金制度のあり方を考える場合にも、大変参考になる次の記述が、この書籍の171ページにあります。

 @賃金は、多くの経営者が思うほど重要ではなく、労働コストを削減しても競争力の獲得にはつながらない

 A業績給や出来高給は人々の支持が高くても、実際は問題が多く、調査結果によると、マイナスに作用することが多い

 B給与の査定制度を導入すれば、生産性の問題がすべて解決すると信じるのは、破滅への道である

 アメリカの学者にこのように言われると、日本の成果主義とは何だったのだろうかと改めて思います。これが本当かどうかは、是非、お読みいただき真偽のほどをお確かめください。

 人により考え方は異なっても、参考にはなるはずです。

 

著    者:ジェフリー・フェファー 著/守島基博 監修/佐藤洋一 訳

出 版 社:翔泳社

発 売 日:2010年10月

カテゴリー:経営書(人材活用)

データブック国際労働比較 2017

 海外旅行のお供にいかがでしょうか?

 “日本は〜” などと私たちは口にしますが、外国のことを知らなければその対比ができないために、日本の特殊性など議論できないはずです。私たちの諸外国に関する知識は、安易な思い込みや中途半端なマスコミの報道から形成されていることも多いのではないでしょうか。

 この本を“読む”と自分が知らなかったことが、たくさんあることに驚かされます。“読む”といっても文章はほんの少しで、ほとんどはグラフと表の資料集です。ですから、眺めることになります。

 皆さんが海外へ旅行に出かけることがあれば、是非、その国について、この本を“眺めて”から出発してください。観光ガイドブックに書かれていないその国の労働環境を理解することができます。アカデミックな視点から海外旅行を楽しむのも一興かもしれません。

データブック国際労働比較2017.png

 

著    者:労働政策研究・研修機構 編

出 版 社:労働政策研究・研修機構

発 売 日:2017年3月

カテゴリー:資料集(雇用、労働など)

新しい人事労務管理 [第5版]

 新任人事担当者を鍛えるのに、もってこいの書籍です。

 初版が刊行されたのは1999年5月、既に5版となりました。出版事情の厳しい中、長期間にわたって支持されてきたといってよいでしょう。

 執筆は、佐藤博樹教授、藤村博之教授、八代充史教授という豪華メンバーです。皆さん大学や大学院で教鞭をとる先生ですが、企業内部に入り込み実態を調査し、実証的に研鑽を積み上げてきた強者揃いです。ある意味では、企業の人事について人事担当者よりも深い見識を持っているといってもよいでしょう。この書籍の読者には、大学生も想定されていますが、企業の人事担当者のことが十分に意識されています。経営と人事の位置関係や実務的な人事制度についてなど、人事部門の所管する業務が網羅されており、人事の業務分掌を作る際にも役立つでしょう。

 また、人事部門のマネージャーが、部下の業務分担を見直す場合にも、大変参考になる書籍だと思います。可能であれば1冊ずつ買い与え、レポートを提出させるような使い方ができると、新任人事担当者の能力開発に大いに役立ってくれると思います。“部下に読ませたいナンバーワン”という位置付けが、ピッタリくるこの一冊です。

 

著    者:佐藤 博樹、藤村 博之、八代 充史

出 版 社:有斐閣

発 売 日:2015年10月

カテゴリー:学術書と実務書の中間(人事労務管理)

仕事の経済学 [第3版]

 労働経済学の重鎮である小池和男先生の名著であり、私たちが持つ数々の“通念”が非常に曖昧なものであることを、圧倒的なデータから教えてくれる書籍です。

 三種の神器と呼ばれた「終身雇用、年功賃金、企業別労働組合」は、日本の本当の姿だったのか?

 欧米と比較して日本は特殊なのか?

 年功賃金が発達した理論的背景とは?

このような様々な疑問に答えてくれます。

 人事担当者となって日が浅い方が読むのも良いですが、人事としてキャリアを重ねた皆さんに読んでいただくと非常に参考になると思われます。この本は、労働経済学の決定版です。読んで損はありません。

 

 

著    者:小池 和男

出 版 社:東洋経済新報社

発 売 日:2005年2月

カテゴリー:学術書(労働経済学)

労働法関連

産業医が見る過労自殺の内側

 人事担当者には、是非、お読みいただき一冊です。

 優れた産業医とは、たぶん著者のような医師のことをいうのでしょう。まず、著者は「産業医とは何をするのか?(第1章)」を理解させてくれます。その中の一つに「産業医は治療は行なわない」という文章がありました。当り前のことかもしれませんが、言われることで改めて認識する人事担当者も多いのではないでしょうか。

 また、産業医の役割には、休職した従業員の復職について意見を述べることもあります。治療については素人である人事担当者にとって、復職判定は難しい問題でしょう。例えば、従業員が復職可という主治医の診断書を提出することがあります。しかし、従業員側の視点が強い主治医が、個別の会社の状況を理解しているとは限りません。主治医の診断書を基に復職させた結果、復職後に体調を悪化させてしまった場合には、会社の安全配慮義務を問われかねません。このような場合、産業医の助言は大きな参考になります。復職判定に必要という正当な理由がある場合、産業医であれば人事担当者では教えてもらえない詳細な医療情報について、主治医から提供してもらえるケースがあるそうです。そして、電通過労死事件を参考に「社員をうつや自殺に追い込む会社の構造(第4章)」を分析し、「過労自殺を防ぐために個人と会社にできること(第5章)」を教えてくれます。

 全般を通して読みやすいだけでなく、産業医の重要性を改めて考えさせられる書籍です。人事担当者にとって避けて通れない分野ですので、この機会に学んでみるのはいかがでしょうか

 

 

著    者:大室 正志

出 版 社:集英社

発 売 日:2017年6月

カテゴリー:新書(安全衛生)

労働者代表制の仕組みとねらい

 労使協定の重要性を改めて考えさせられる書籍です。

 例えば、残業を実施するとき免罰効果を発揮する36協定は、誰が結ぶのか? 言わずと知れたところです。「事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」というフレーズが、労働基準法には14箇所登場します。つまり、労働基準法には14の労使協定が存在するのです。しかし、労働基準法に限らず民事再生法など、法律上、労働者代表の意見を聞く機会は全部で110個あるのだそうです。この書籍には、110個のリストが掲載されており、びっくりしました。

 一方、労働組合の組織率の低下が問題視されています。また、非正規労働者が労働組合に加入していないケースも多く、声弱き者の代弁者の不在も問題でしょう。それでも、労働組合があれば会社にとって労務管理の効率性を高めることができるのでありがたいことだと思います。労働組合がなければ労働者代表を選出することになりますが、問題もあります。労働者代表の選出は、「民主的な手法によること」とされています。案外きちんと選出されていないことが多いのです。何らかの形で会社が指名しているケースがあり、労使協定の有効性そのものが否定されることもありえます。労働基準監督署の臨検では、労働者代表の選出に問題があるために是正勧告を受けているケースが散見されます。

 この書籍で述べられているのは、法律で労働者代表制を義務化し、労働組合のある会社では労働組合がその任につき、労働組合のない会社では労働者代表の選出方法や権限など、きちんと法律で整備していこうということです。今後、長時間労働の管理など労働者代表の意見聴取がますます重要になることからしても、労働者代表制の法制化は重要かもしれません。この機会に、関連情報に接しておくのも人事担当者にとって有意義でしょう。 

 

 

著    者:小畑 明

出 版 社:エイデル研究所

発 売 日:2017年5月

カテゴリー:実務書(労働法)



 

監督署は怖くない! 労務管理の要点

 「監督署は怖くない」のだそうです。

 そうはいっても、労働基準監督官に書類送検をされた結果、大手企業の社長が辞任に追い込まれるこのご時世です。労働基準監督官の臨検(立入調査)を歓迎する人事担当者はいないでしょう。そして、労働基準監督官は、ある日突然やって来ます。会社が臨検を断ることはできません。逃げられないのであれば、正面から向き合う他ないのかもしれません。

 労働基準監督官の臨検は、ランダムに実施されるわけではありません。厚生労働省が策定する「地方労働行政運営方針」および都道府県労働局が策定する「行政運営方針」を踏まえて、毎年、監督指導計画が作成されます。この書籍には、外部の人間では分かりにくい監督指導計画書の具体例があったり、サービス残業などの未払い賃金の遡及期間に関する説明があったり、大変役立ちます。また、労働基準法の前身である工場法時代の監督制度に関する解説もされていますし、最近の厚生労働省の対応状況も紹介されています。

 単なるノウハウ本ではなく、人事担当者が知りたい“もう一歩”について言及されているので、とても参考になるでしょう。労働基準監督官の臨検に対して正面から向き合うために、自己研鑽に励む人事担当者にお勧めしたいと思います。 

 

 

著    者:角森 洋子

出 版 社:労働調査会

発 売 日:2016年9月

カテゴリー:実務書(労働行政)

労働条件変更の基本と実務

 「第四銀行事件」と「みちのく銀行事件」は、両方とも55歳以降の賃金が減額された銀行の事案です。過半数組合の同意が得られている点も共通しています。しかし、前者では変更が有効とされ、後者では無効とされました。判例中の判例ともいうべき2つの裁判ですが、いわゆる“不利益変更”の問題です。人事担当者なので、私は知っている。けれども、いざ思いだしてみると「何だっけ?」というような事柄をズバッと明快に解説してくれる書籍です。

 就業規則の不利益変更で悩む人事担当者も多いかもしれません。例えば、休職と復職を繰り返す従業員について、前後の休職期間の通算規定を改めて設ける場合です。これは、不利益変更に該当しますので、簡単なことではありません。しかし、不可能というわけでもありません。この他にも、さまざまな労働条件の不利益変更について、裁判例の解説にとどまることなく実務的な対応方法を交えながら、考え方を解説してくれます。

 不利益変更について解説する書籍はたくさんあると思いますが、ここまで分かりやすいものは多くはないと思います。具体的な事例にかなり踏み込んだ解説もされています。また、合併により2社の労働条件を統一する場合などは、少なからず不利益変更の問題がでてきますが、そのような時にも役立つでしょう。久しぶりにアンダーラインを引きまくった書籍です。お勧めできる1冊だと思います

 

 

著    者:石嵜 信憲 編著、橘 大樹・石嵜 裕美子 著

出 版 社:中央経済社

発 売 日:2016年9月

カテゴリー:実務書(労働法)



 

取締役の法律知識<第3版>

 人事の本ではなく、取締役の本です。

 著者は、この書籍の第1の特徴として「取締役会に出席したとき、1人で決定するときなど、具体的な場面に即して」、「経営判断の原則」について、力を注いで解説したことを挙げています。取締役として知って置かねばならないことが書かれているわけです。ですので、取締役ではない人事担当者には、直接関係なさそうです。ところがどっこい、これが結構、参考になるのです。

 例えば、取締役、執行役、監査役、それぞれの違いと役割を解説してくれます。そして、執行役は会社法上のものですが、執行役員は法律上のものではないので、会社ごとに定義が異なります。そのため、会社によっては経営者に近い存在であるケースもあれば、従業員に近い場合もあり得ます。また、従業員との雇用契約に基づく「給与」が「労働の対価」であるのに対し、取締役との委任契約に基づく「報酬」は、経営のプロとしての「業務遂行の対価」である点が異なると解説されています。会社法が改正され、ますます理解が困難になる中、分かりやすく解説してくれるのでありがたいです。

 専門分野ではないものの、新聞レベルよりはもう少し知識を持っていたい。そんな人事担当者にお薦めできる書籍です。新書ですので、手軽に素早く知識を習得することができるでしょう

 

 

著    者:中島 茂

出 版 社:日本経済新聞出版社

発 売 日:2015年4月

カテゴリー:新書(会社法)



 

労使協定・労働協約 完全実務ハンドブック

 労使協定の締結でお困りのことはありませんか?

 労使協定を締結する場合には、過半数労働者の選出方法、分母となる母集団の範囲、行政への届出義務、有効期間など確認しなければならない事項はいくつもあります。そんな時、役に立ってくれるのがこの書籍です。

 労働基準法には、14の労使協定が登場します。もともと労使協定は、法律で禁じられていることを許される免罰効果を与えるものなので、コンプライアンス上非常に重要なものです。もし、労働基準監督官の臨検が実施された時に、該当の労使協定がなければ、それだけで是正勧告を受けることになってしまいます。また、労働基準法が定めるもの以外にも育児介護休業法に定められる労使協定があります。例えば、従業員が育児休業を申し出た場合でも入社1年未満の従業員であれば、労使協定に定めることによって適用を除外することも可能です。このような労使協定について、記入見本をふんだんに盛り込み、考え方を丁寧に解説しています。

 労使協定をメインテーマとした書籍は意外に少なく、情報の流通量が少ない中で、“完全”実務ハンドブックという名前にうそ偽りのない、たいへん優れた実務書だと思います。労使協定の作成を煩わしいと感じている人事担当者にとっては、その苦役から解放してくれる1冊なのかもしれません

 

 

著    者:渡邊 岳

出 版 社:日本法令

発 売 日:2010年3月

カテゴリー:実務書(労働法)

わかりやすい労働安全衛生管理

 労働安全衛生法は、わかりにくい。

 そう思います。労働安全衛生法は、労働基準法と条文の数はさほど違いませんが、労働安全衛生規則(安衛則)は600条を超えています。また、通常あるはずの施行規則がなく、それが安衛則の中に取り込まれていることや関連の規則が多いことが、わかりにくさに繋がっているのでしょう。

 このようなことから、労働安全衛生法を網羅的に解説しようとすると情報量が多すぎるため、読みやすさを配慮してか、内容を浅く止めている書籍が多いように感じます。この書籍は、労働安全衛生法の全体像を踏まえながら、適度に深くかつ詳細にはなり過ぎず、適当なボリューム感に留めている点で優れていると思います。一方、労働安全衛生管理の分野は変化が激しく、従来からの職業性疾病だけでなく、メンタルヘルス、過重労働または産業医に関する対応などは、喫緊の課題となっています。著書は、元労働基準監督官だけあって、この分野に対しても造詣が深く参考になります。

 製造業に携わる安全管理担当者にとっては、ひょっとするともの足りないと感じる部分があるかもしれませんが、オフィス勤務を中心とする会社の人事担当者であれば、問題なく必要以上の情報レベルに達していると感じるでしょう。“わかりやすい”労働安全衛生管理の書籍として、トータルバランスの取れたお勧めの1冊です。 

 

 

著    者:角森 洋子

出 版 社:経営書院

発 売 日:2015年3月

カテゴリー:実務書(労働安全衛生法)

労働問題を読み解く民法の基礎知識

 人事の仕事に民法の知識は必要でしょうか?

 民法は、1000条を超える法典です。その全てとはいわないまでも、労働法に関係する部分は知っておいた方がよいかもしれません。例えば、「退職願を提出して14日を経過したとき退職とする。」と、就業規則に書かれているのをよく見かけます。なぜ14日なのでしょうか?これは、労基法の条文を見ても出てきません。民法627条1項を確認してはじめて分かります。ただし、いわゆる正社員の場合には、それとは異なる取り扱いがあることも同条2項に定められていますので、そこまで確認しなければなりません

 また、使用者の責めに帰す休業の場合は、60%以上の休業手当を支払うことが、労基法26条に定められています。一方、民法536条2項には、それでは足りず100%の賃金支払いが必要となるケースが書かれています。その他にも、労働者派遣法で問題となる“偽装請負”の「請負」は、民法に定められています。

 民法を労働法の視点から解説した書籍はいくつもあると思いますが、この書籍は上記のような内容を詳細に教えてくれます。多少、難しい部分もありますが比較的読みやすいような気がします。500ページを超えており、やや厚めの書籍ですが、労働法を一通り学んだところでもう一歩知識を深めたい、勉強熱心な人事担当者へお薦めしたいと思いま。 

 

 

著    者:森井利和 編著

出 版 社:労働調査会

発 売 日:2015年4月

カテゴリー:実務書(民法)

会社が「泣き」を見ないための労働法入門

 サッと読むのにちょうど良いと思います。

 労働法を体系的に学ぶというよりは、“会社が「泣き」を見ないため”特定のトピックに焦点を絞った書籍です。ブラック企業や過重労働など最近の動向を念頭に置き、以下のような章構成になっています。

 第1章:「ブラック企業」問題

 第2章:サービス残業

 第3章:過重労働

 第4章:パワーハラスメント

 第5章:若者の使い捨て

 第6章:その他の課題(追い出し行為等)

 第7章:ブラック企業と思われない組織づくり

 タイトル通り、入門書として書かれていますので詳細な部分までは立ち入らず、適切な文章量と平易な言葉使いのおかげで簡単に理解することができます。分かりやすさを重要視しているのでしょう。人事担当者が読むだけでなく、部下を抱える管理職に読んでもらうのもよいと思います。

 著者である北岡先生は、元労働基準監督官であり行政から見た視点が活かされていると思います。いわば、監督官から会社へのアドバイス集といえるかもしれません。入門書とは言いながら必要な情報も揃っていますので、あまり労働法に詳しくない人が、とりあえず1冊よみたいときに適しているような気がします

 

 

著    者:北岡 大介

出 版 社:日本実業出版社

発 売 日:2014年5月

カテゴリー:実務書(労働法)

「雇止めルール」のすべて

 2018年問題への対応はお済みですか?

 2018年問題とは、2013年4月に施行された改正労働契約法が5年を経過し、有期雇用従業員が無期転換権を行使できることを指しています。つまり、反復更新された労働契約が5年を超えた場合には、契約社員が正社員に近い存在になることを意味します。仮に、それを回避したい会社は、5年を経過する前に「雇止め」を実施するでしょう。その「雇止め」は有効になるのでしょうか?そもそも「雇止め」はどのような場合に、有効とされるのでしょうか。著者は、「雇止め」に関する基本について解説し、このような疑問に答えてくれます。

 また、この書籍では7つの要素から「雇止め」の効力をスコア化し、その有効性を検証する試みが為されています。次の事例であれば、「合計3点で、雇止めは無効になる」ことが予想されます。これら7つの要素から100件以上の裁判例について検証したコメントが載っているのです。自社の「雇止め」が有効とされる可能性が高いか否かの予想に役立つでしょう。

@永続性のある業務を担当している                     ±0点

A更新回数3回以上または通算雇用期間が3年超            +1点

B正社員とは、職務の点でも、権限・責任の点でも異なる          -1点

C毎回、契約書を作成しているが、面談や成績の検証はしていない  ±0点

D特段の事情がない限り更新するのを原則としている           +2点

E上司による更新を期待させる言動があった                +1点

F本件雇止め以前に、雇止めの実績がいくつかある           ±0点

 「雇止め」の問題で頭を悩ませている人事担当者はたくさんいるでしょう。2018年問題への対応も含め、「期間の定めのある労働契約」について、今後の方向性を見定める重要な参考書といえそうです

 

 

著    者:渡邊 岳

出 版 社:日本法令

発 売 日:2012年12月

カテゴリー:実務書(労働法)

 

 

労働基準監督署への対応と職場改善

 来てほしくないもの、でしょう。

 労働基準法の番人とされる労働基準監督官は、ある日突然やって来ます。それは、労働基準監督署が実施する臨検のことです。臨検が実施された事業場では、是正勧告書が発せられているケースが多くあります。そして、会社が是正勧告書を受け取ると、法違反状態を是正し指定された期日までにその報告書を提出しなければなりません。ただでさえ通常の業務で忙しい人事担当者にとっては、できれば避けて通りたいと思うところでしょう。そのような時の対処法が書かれた書籍です。是正勧告書のサンプルやその解説が少ないのは残念ですが、著者は元労働基準監督官であり、長年、臨検を実施してきた立場から、臨検や労働基準法などについて丁寧に解説してくれます。

 また、この書籍に中には、「コーヒー・ブレイク」というコラムが16箇所登場します。過去にあった出来事を記述しているのですが、労働基準監督官としての感想が記されており、現場の雰囲気が伝わってきます。その中で、労働基準監督官として初めて臨検を実施した時の記述があります。「緊張して見れども見えずという状態で、社長さんの話を聞くのが精一杯」だったそうです。労働基準監督官も人間だな〜、と親近感がわくでしょう。

 労働基準監督署への対策本で1冊購入したいとき、迷ったらこの書籍はいかがでしょうか

 

 

著    者:角森 洋子

出 版 社:労働調査会

発 売 日:2010年7月

カテゴリー:実務書(労働行政

 

 

ダンダリン 一〇一

 「それ、労働基準法違反です!」

 主人公の「段田 凛 (29歳女性)」は、ブラック企業を取り締まる労働基準監督官です。竹内結子さんの主演でドラマ化されたので、知っている人も多いでしょう。その原作が、このコミックです。

 コミックだからといって、馬鹿にしてはいけません。多少(?)、脚色はあるものの“サービス残業や労災かくし”など、労働基準監督官が扱うテーマを描いており、労働基準法をきちんと解説してくれます。本物の労働基準監督官からは、「あれは、ないだろう」といわれている部分もあるようですが、自分たちの仕事を知ってもらえるという意味では、まんざらでもないようです。

 人事担当者の立場からすると、労働基準監督官は怖い存在でもあるわけですが、労働基準法を運用しているという点では、ある意味パートナーといえるのかもしれません。人事担当者として、普段、馴染みのうすいパートナーの仕事を理解することも必要ではないでしょうか。

 仕事に疲れて今日はもう本を読みたくない時、ふと、別の角度から労働行政や人事の仕事を見てみるのも面白いかもしれません。スマホをちょっとわきに置き、会社帰りの電車の中でいかがでしょうか。勧善懲悪ものであり、思わず“にやり”とすることでしょう

 

 

著    者:鈴木マサカズ

出 版 社:講談社

発 売 日:2010年9月

カテゴリー:コミック(労働行政

 

 

企業労働法実務入門 〜はじめての人事労務担当者からエキスパートへ

 特徴は、特にありません。

 どこにでもあるふつうの入門書です。基本に忠実になると似通ったものになるのかもしれませんね。しかし、読みやすいのです。

 この書籍では、平易な文章とたくさんの図表が用いられ、わかりやすくするための工夫が凝らされています。また、「一歩前へ」や「コラム」などのコーナーが随所に設けられ気を使っていることがわかります。ですが、これだけではありふれた手法なのでたいしたことはないでしょう。この書籍が読みやすいのは、たぶん「罫線」と「枠囲み」が巧みに用いられているからだと思います。結論として各項目の最後に2〜4行の文章を配置して、それを枠で囲んで見やすくしています。簡潔で平易な文章が効果的に存在するおかげで、ポイントを重点的に理解することができ、読者に安心感を与えてくれます。このような該当箇所が結構多いのです。文字だけを追っていると疲れてきますが、この的確な「枠囲み」が随所にあるおかげで飽きないのです。読書を苦手とする新人に向いているかもしれません。

 ここがよいと特徴をアピールできないのがとても残念なのですが、人事や労働法の初心者にはきっとフィットします。表紙には“若葉マーク”もついています。だまされたと思って読んでみませんか?初心者むけと言いながら、いやいやどうして充実した内容で侮れません

 

 

著    者:企業人事労務研究会

出 版 社:日本リーダーズ協会

発 売 日:2014年5月

カテゴリー:実務書(労働法)

日本の雇用終了 〜労働局あっせん事例から

 日本は解雇規制の厳しい国だといわれることがありますが、本当はそうでもない実態が描かれています。

 この書籍は、厚生労働省からデータ提供を受けた研究者が、労働局で扱われた「あっせん」事例について、詳細に事例分析をしたものです。申請内容の内訳では、「雇用終了」が66.1%、「いじめ・嫌がらせ」が22.7%、「労働条件引下げ」が11.2%となっており、「雇用終了」に関する事案が特に多くなっているのがわかります。

 まず、気になるのは「あっせん」が成立した場合の解決金額で、72.8%が「40万円未満」で解決しています。また、「10万円以上20万円未満」で解決したものが最も多く24.3%を占めています。労働審判では、全体の約8割が200万円未満の金額帯に属していることと比較すると相場の違いに驚かされます。(『労働審判制度の利用者調査』を参照ください)

 その他には、次の記述も気になります。

 「雇用終了に至る最大の原因がそれら「能力」自体よりも、会社の側からみて許し難い「態度」の不良性にある」(P103)

 「解決金額は当事者の態度(気迫)によって左右される」(P233)

 解雇などの問題について判例を参照する人事担当者は多いと思いますが、そういった表舞台に出てこない事例が山のように登場します。労働法の世界だけでは語れない世の中の実態を勉強するのに大変役立つ書籍といえるでしょう

 

 

著    者:労働政策研究研修機構 編

出 版 社:労働政策研究研修機構

発 売 日:2012年3月

カテゴリー:学術書(個別労働紛争)

有期雇用法制 ベーシックス

 有期雇用について勉強したい人事担当者にお薦めです。

 改正労働契約法が施行され有期雇用法制が注目されている中、“期間の定めのある従業員”の労務管理は重要なテーマになっています。この書籍は、有期雇用法制に焦点を絞り、労働基準法14条(契約期間等)、労働契約法17条(契約期間中の解雇等)、18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)、19条(有期労働契約の更新等)、20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)、について逐条解説しています。

 労働法に関する書籍には、基本事項を“広く浅く”解説しているものがたくさんありますが、それだけでは満足できない人事担当者も多いのではないでしょうか。その点では労働法の研究者が改正労働契約法の影響についてポイントを整理し、“狭く深く” 解説しているのでとても参考になります。また、改正労働契約法18条の“5年無期転換ルール”について、諸外国の状況にもふれています。日本では5年を超えて労働契約を反復更新すると従業員に無期転換権が発生しますが、ドイツは2年、オランダは3年、イギリスは4年、韓国は2年だそうです。

 昨今、ジョブ型正社員も話題となっており、“期間の定めのある従業員”と“いわゆる正社員”との位置関係を明確にする必要性に迫られています。これからの雇用区分を考えていくには、気になる1冊といえるでしょう

 

 

著    者:荒木尚志 編著

出 版 社:有斐閣

発 売 日:2014年6月

カテゴリー:学術書(労働法)

労働法入門

 「フランスの皇帝ナポレオン・ボナパルトには、甥がいた。」 

 この本の2ページ目です。けっしてフランスの歴史本ではありません。労働法にとっては、ナポレオンに甥がいようといまいと関係ない話ですが、後にナポレオン三世となるこの甥は、当時の労働者の現状を分析した書籍を執筆していたそうです。このような歴史上の人物を登場させながら、労働法が成立していく背景が解説されています。一方、はしがきには働くよりも趣味に生きる「末広さん」が登場します。仕事の都合で休暇の予定を変更するよう上司から言われ、悩むシーンが出てきます。もし「末広さん」がフランスで働いていたならば、そんな問題は起こらないそうです。このような例を通して日本の労働法の特色を解説してくれます。

 ただわかりやすく労働法をなぞっただけでは、読者に興味を持ってもらえないので工夫をしたそうです。もちろん興味をひくだけでなく、体系的に労働法がわかりやすく解説されています。そして、最後の部分では「国家」と「個人」と「集団」の組み合わせを論じ、これからの労働法改革の方向性が示されています。明確に書かれてはいませんが、従来の労働組合とは異なる“労使協議制の法制化”を提言しています。

 “労働法入門”というタイトルの本はたくさんありますが、手始めの1冊として万人にお薦めできる本だといえるかもしれません

 

著    者:水町勇一郎

出 版 社:岩波書店

発 売 日:2011年9月

カテゴリー:新書(労働法)

元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術 [改訂第3版]

 「及び」と「並びに」の使い方に問題はありませんか?

 話し言葉であれば、気にするほどのことはないでしょうが、社内通達を発信する人事部のような部署で文案を作成する担当者であれば、必要になってくるかもしれません。この点について著者は、次のように記述しています。

 『 「及び」は一番小さなグループ分けのときだけに使い、その他のグループ分けのときには「並びに」を使ってその意味を表します。「鉛筆及び消しゴム並びにお弁当を忘れずに・・・」という具合です。「並びに」は、その部分でグループ分けがあるという合図といえるのです。』

 非常にわかりやすい解説だと思います。その他にも、「みなす」と「推定する」や「却下」と「棄却」の違いなど、知っていると重宝しそうな豆知識のオンパレードです。著者は、衆議院法制局で働いた経験を活かしてこの書籍を執筆したそうですが、平易な言葉を用いて読みやすく、専門書といった雰囲気はあまり感じません。手軽に読むことができますので、若手人事担当者の勉強用、“又は”ベテラン担当者の知識の整理にいかがでしょうか?(ちなみに、この“又は”と“若しくは”の使用法も解説されています。)


著    者:吉田 利宏

出 版 社:ダイヤモンド社

発 売 日:2016年5月

カテゴリー:実務書(法律)

 

「問題社員」対応の法律実務 〜トラブル防止の労働法

 皆さんの会社には、こんな社員はいませんか?

 「始末書の提出に応じない社員」

 「繁忙期に長期連続の休暇をとる社員」

 「無断欠勤を重ねた結果、失踪して連絡のとれない社員」

 このような場合の対応策が書かれています。この書籍が出版された当時でも“問題社員”の話は結構あったと思いますが、最近では耳にする機会がさらに増えたような気がします。会社の視点から例示したケースを見ると、いづれも問題社員になるのかもしれませんが、法律上の問題となるかは微妙な場合もあり得ます。対応策だけでなく、判例を交えてその考え方まで解説してくれるので、とても勉強になります。

 すべてのトラブルを想定することはできないかもしれませんが、会社で発生しそうな多くのトラブルを想定し、そのような時に、どう対応するべきかがたいへん分かりやすく書かれています。また、見出しが細かく付けられており、通勤時間のような短い時間の読書に最適です。忙しい人事担当者にお薦めしたいと思います

 

 

著    者:石井 妙子

出 版 社:日本経団連出版

発 売 日:2000年12月

カテゴリー:実務書(労働法)

労働法 第6版

 今までの労働法学者とは、一味違います。

 ホテルで実施されるようなセミナーでもジーンズで登壇し、この人は本当に東京大学の教授なのだろうか、と疑問に思わせておいて、カラタケを割ったような解説に頷かされてしまいます。労働法は難しいと感じても良いはずなのに、あまりそういう感覚にとらわれないのは、著者の情報処理能力とそのルックスが、スマートだからかもしれません。このような著者が執筆した労働法のテキストが、この書籍です。

 労働法のテキストでありながら、第1編では労働経済学が登場し、いわゆる三種の神器と呼ばれる「長期雇用慣行、年功的処遇、企業別労働組合」が解説されています。また、労働経済学の重鎮である小池和男先生の「仕事の経済学」から日欧比較の賃金グラフを引用し、年功賃金を分かりやすく解説してくれています。著者曰く、「労働法をめぐる問題を考察するにあたっては、その基盤にあるものに思いを致すことが重要」だからだそうです。このような読み手に対する配慮もあり、非常に分かりやすいと評判で、既に第6版になりました。

 労働法のテキストと言えば、まず思い浮かぶのは菅野和夫先生の「労働法」ですが、そのボリュームに圧倒されハードルが高いと感じる人事担当者も多いかもしれません。そういう場合は、まずこの書籍から読んでみるのも良いでしょう。ただし、この書籍も500ページを超えていますので、それなりの努力は必要です。体系的に労働法を理解するために本気で勉強したいが時間も節約したい。そのような人事担当者に向いているかもしれません

 

 

著    者:水町勇一郎

出 版 社:有斐閣

発 売 日:2016年3月

カテゴリー:学術書(労働法)

実務の現場からみた労働行政

 いしざき節満開です。

 労働法弁護士として有名な著者が、「サービス残業、偽装請負、名ばかり管理職」の3つの側面から語ったものであり、行政指導を是として解説する他の書籍とは一線を画しています。目次を見ると、次のようなタイトルが並んでおり、これだけでも他の書籍とは違う雰囲気を感じます。

 「 行政には「頭を下げていうことを聞くな」 」

 「 確定していない判決に振り回されてはいけない 」

 「 自社の足元をしっかり見る 」

 「 問題の本質は労働者の「安全と健康」にある 」

 やや過激な表現もありますが、いちいち納得させられる解説がなされていると思われます。

 サービス残業問題で悩む人事担当者もいらっしゃるでしょう。この書籍の123ページ以降では、サービス残業に関する遡及支払期間は、2年間ではなく3箇月間を前提とするべき、との貴重なアドバイスがされています。ひょっとすると、朗報になるかもしれません。その他、管理監督者についても詳細に解説されており、他の専門書よりも一歩深く踏み込んでいると評することができるでしょう。

 終盤のページには、次のような記述があります。「もう還暦を迎えたのですから、「労働行政被害110番」をつくりたいくらいなのです。」 なかなかここまで、言う人は少ないでしょう。法律を順守しようとするがゆえに、行政の行き過ぎた指導に警鐘を鳴らしているのだと思います。労働法に関する書籍としては、珍しいタイプだとは思いますが、違う角度から臨むことで、人事担当者としての実務能力を高めてくれる書籍といえるでしょう。

 

 

著    者:石嵜信憲

出 版 社:中央経済社

発 売 日:2009年6月

カテゴリー:実務書(労働法)

労働法政策

 “人事の本”ではありません。

 読者としては、国会議員から労働経済を学ぶ学生まで、はば広く想定されています。この書籍は、東京大学公共政策大学院の「労働法政策」という授業のために執筆されたテキストだそうで、政策を学ぶためのものです。その為に、「いかに解釈するかよりも、いかに制定され、改正されてきたかを知ることが重要」だと、著者である濱口先生はおっしゃっています。

 労働法の各分野別に歴史を辿っていくので重複する部分もありますが、リフレインされた描写によって分かりやすくなっており、その圧倒的な情報量にただ感心するばかりです。例えば、「第9章 労働基準監督システム」では、労働基準監督署が、いつ、どのような経緯で設置されたのか記述されていますが、ILO条約に労働基準監督署の規定があることや戦後GHQが関係していること、などとても面白く読むことができます。

 人事の仕事に直接すぐに役立つわけではないかもしれませんが、実務書を読むことに目途がつき、次に読むべき本を探している人事担当者には良いかもしれません。500ページを超えるボリュームと詳細な描写を読破するのは大変かもしれませんが是非トライしてみてください。ご健闘をお祈りいたします。

 

 

著    者:濱口 桂一郎

出 版 社:ミネルヴァ書房

発 売 日:2004年6月

カテゴリー:学術書(労働法政策)

労働審判制度の利用者調査 〜実証分析と提言

 “早くて、おいしい。” 

 牛丼ではなく、労働審判制度の満足度です。この書籍は、東京大学社会科学研究所の実施した「労働審判制度利用者調査」について、分析・提言としてまとめられたものです。労働審判制度については、“和解金は?” “弁護士費用は?” など、利用したことのない企業にとっては分からないことがたくさんあります。労働審判はその迅速性から大変高い評価を受けていると言われてきましたが、本当はどうなのかを教えてくれる書籍です。

 例えば、解決金については、使用者側・労働者側とも全体の約8割が200万円未満の金額帯に属し、結果の評価については、労働者側では59.5%が「満足している」と回答しているのに対し、使用者側では52.5%が「満足していない」と回答しており、結果の評価が逆転しています。また、弁護士費用については、使用者側・労働者側とも約半数が“高い”と回答しており、その理由についても丁寧に考察されています。

 分析編では経済学的アプローチからやや難解なところもありますが、貴重なデータのオンパレードですので、個別労働紛争が気になる人事担当者にとっては、必須の1冊といえるかもしれません。

 

 

 

著    者:菅野 和夫、仁田 道夫、佐藤 岩夫、水町 勇一郎 編著

出 版 社:有斐閣

発 売 日:2013年3月

カテゴリー:学術書(労働審判の制度分析)

就業規則からみた労働法 第三版

 内定者の教育用に、いかがでしょうか?

 大学生が社会に出てから困らないように、最近では授業の一環として実務的な労働法を教えている大学もあるようですが、まだまだ少数派だと思われます。“就業規則”という名前は知っているでしょうが、社会に出てサラリーマンを経験したことのない大学生にとって、それが何かを理解することは、結構大変なことかもしれません。この書籍は、そういった大学生をイメージして書かれたものですので、理解しやすく平易なものになっています。反対にみると、人事担当者にとっては物足りないかもしれません。

 弁護士や社会保険労務士の解説本はよくありますが、研究者が就業規則を中心に正面から語ることは珍しいのではないでしょうか。この書籍は、研究者の視点で記述されているので実務家とは視点が異なり、そのズレのおかげで読者の理解が進むのかもしれません。

 内定者教育で課題図書について迷っている人事担当者にお薦めしたいと思います。

 

 

著    者:大内 伸哉

出 版 社:日本法令

発 売 日:2011年11月

カテゴリー:実務書(労働法)

賃金の法律知識

 賃金に関する素朴な疑問は、たくさんありますよね。

 給与計算の仕事をしていると “ふと、気になること“ が出てきて、掘り下げたくてもつい業務をこなすことが優先になってしまう。そんなことを感じる人事担当者も多いのではないでしょうか。例えば、“賃金は月1回以上支払わなければならないのに、なぜ通勤手当は6箇月ごとに支給することが違法にならないのか?” これは、労働基準法の賃金5原則に反した取り扱いですが、実務ではよくあるお話です。

 このようなQ&A形式で、明確に解説してくれるのが本書です。数ある賃金の解説書の中でもこれほど分かりやすく記述している書籍は、そんなに多くはありません。 著者は元労働基準監督官だけあって細かな実務の積み上げから書かれており納得させられます。

 給与計算の担当者なら手元に置いておきたい1冊となるでしょう

 

 

著    者:中川 恒彦

出 版 社:労働法令協会

発 売 日:2003年3月

カテゴリー:実務書(労働法)

雇用社会の25の疑問 労働法再入門(第2版)

 「会社は、美人だけを採用してはダメなのであろうか。」

 このような28個の疑問に、学者が真正面から答えてくれます。著者曰く、「ワイン・バーで社会人と会話をしたり、ゼミで学生と対話したりするときのイメージで書いてみた。」そうです。

 28個のちょっと変わったテーマ設定ですが、書いてある内容はいたってマジメです。平易な文章で気軽に読むことができます。社内勉強会のテキストに用いれば議論が活発になりやすく、アフター5の勉強会に向いているかもしれません。なお、質問に対しては、最後にきちんと結論のコーナーがあり、分かりやすくなっています。

 ちなみに、冒頭の質問に対する回答は、「会社は、どのような人を雇ってもかまわない。美人だけを集めるのも、道徳的な非難は別として、法的には問題はない。ただ、そうした行動が経済的な合理性にかなっているのかどうかは別問題である。その際には、美人であることが、会社の生産性に貢献するかどうかがポイントとなる。」と記述されています。

 

 

著    者:大内 伸哉

出 版 社:弘文堂

発 売 日:2010年9月

カテゴリー:学術書(労働法)

成果主義人事と労働法

 成果主義とは何だったのでしょうか?

 この書籍は、成果主義人事をめぐる法律問題を総合的に検討することを目的として出版された研究書ですが、その第1章では、人事労務管理の視点から慶應義塾大学の八代教授が次のように記述しています。

 「精緻すぎる制度は「人事担当者の自己満足」にはなっても、ライン管理職が使いこなせずに、結局有名無実化するのである。」、「むしろ重要なのは、成果評価の精度を上げることに労力をかけるよりも、「成果を適正に評価できない管理職を淘汰する仕組み」を構築することである。」

 人事担当者にとっては“耳が痛い”部分もありますが、人事担当者として成果をどのように捉え、評価制度をいかに構築するかのヒントを与えてくれているのかもしれません。この機会に成果主義をもう一度考えてみるのも良いかもしれません。

 成果の測定や評価制度で悩みを持つ人事担当者にお薦めしたいと思います。

 

 

著    者:土田 道夫+山川 隆一 編

出 版 社:日本労働研究機構

発 売 日:2003年6月

カテゴリー:学術書(人的資源管理+労働法)

部下をもつ人のための人事・労務の法律〈第6版〉

 “人事担当者の入門書”ではありません。

 管理職になると部下の労務管理を担当するわけですから、労働基準法の基本的なことを知っていないといけないでしょう。また、会社と部下の間に立ってマネジメントをするには、管理職の職務権限や契約に関する知識なども必要です。

 労働法の解説書は、探せばいくらでもあるわけですが、入門書と言いながら難解だったり、詳細な部分にこだわったりする書籍も多いと思います。部下に接する上司のための法律書は意外に少ないのではないでしょうか。この点について著者である安西先生は「そこで、部下をもつ人のために必要な法律上の知識のうち、基本的な事項をまとめたものが本書です。」と、範囲を限定したことを記しています。いわば、“上司になったら読む本”といっても過言ではないでしょう。

 新書ですから気軽に読むこともできますので、人事部門から各部門の管理職へお薦めできる副読本として、ご紹介いただくと良いかもしれません。 

 

 

著    者:安西 愈(あんざい まさる)

出 版 社:日本経済新聞出版社

発 売 日:2016年11月

カテゴリー:新書(労働法)

労働判例百選[第9版]

 重要判例を学びたい人事担当者の皆様へ。

 人事担当者にとって労働法は重要ですが、法律だけを勉強しても実務では通用しないのが、労働法の難しいところでしょう。

 例えば、「秋北バス事件」や「第四銀行事件」から就業規則の不利益変更を学び、「東芝柳町工場事件」や「日立メディコ事件」から有期雇用社員の雇止めなどを勉強した人事担当者が数多くいるはずです。今となっては労働契約法に規定されたものですが、それまでは、判例を知らなければ手も足も出ない分野でした。他にも判例を知らなければ対処できない人事に関する多くの分野があります。

 最高裁の判例は確定判決なので別ですが、一つひとつの裁判例が判例とよべるレベルに達したものかどうかは、なかなかに難しい問題です。この書籍であれば、専門家が吟味し判例として扱うことに問題がないという“お墨付き”が与えられているようなものですから、安心して勉強することができます。 

 

 

著    者:村中 孝史、荒木 尚志 編

出 版 社:有斐閣

発 売 日:2016年11月

カテゴリー:実務書(労働法)

雇用法改正 〜人事・労務はこう変わる

 2012年は、労働者派遣法、高年齢者雇用安定法および労働契約法の改正という重要な年となりました。特に、“有期労働契約の無期転換”や“60歳代前半の継続雇用”は、人事担当者にとって、すぐに対応を迫られる問題です。一連の法改正は、非正規従業員を念頭に置いています。非正規従業員が30%を超えるようになり、労働法がターゲットとする分野も少しずつ移りかわっているようです。

 この書籍の中で安西先生は、「これらの法改正は、いずれも適用上、企業に対して厳しい労働規制を強いるものであり、また、一方においてそれぞれ訴訟リスクをはらみ、今後は労働訴訟の激増が予想されます。」と述べ、今回の法改正が大きな転換点であることを指摘しています。

 当然ですが、どの企業でも運用実績が少なく該当する裁判例も少ない中で、この書籍は一歩踏み込んで解説されており、とても参考になります。新書ですから手早く読むことができますので、まずは一読していただいた方が良い一冊だと思われます。 

 

 

著    者:安西 愈(あんざい まさる)

出 版 社:日本経済新聞出版社

発 売 日:2013年2月

カテゴリー:新書(労働法)

労働事件審理ノート[第3版]

 裁判官の引継書であり、労働裁判のバイブルとして弁護士に愛用されている書籍です。

 他の訴訟と比較して労働裁判を担当することは、裁判官であっても大変な苦労を伴うらしく、「労働事件で得た知識、ノウハウは、先任の裁判官から後任の裁判官に引き継がれることもなく、後任の裁判官は、先任の裁判官と同じ苦労を繰り返すのが常」だそうです。そのため、先輩裁判官が後輩への技能伝承のために書いた引継書とでも言うべき性格をもった書籍です。

 解雇など事件の類型ごとに、1.要件事実→ 2.典型的な争点→ 3.基本的な事実関係→ 4.基本的な書証→ 5.訴訟運営上のポイント→ 6.関連書式という流れで構成されており、裁判のことを詳しく知らない者にもわかりやすく記述されています。中でも、裁判の証拠として提出すべき必要な書類が列挙されていますので、“いざ”という時の準備には、とても参考になるでしょう。

 昨今、個別労働紛争が増加していますので、人事担当者のたしなみとして読んでおくのも良いのではないでしょうか。 

 

 

著    者:山口 幸雄、三代川 三千代、難波 孝一 編

出 版 社:判例タイムズ社

発 売 日:2011年11月

カテゴリー:実務書(労働法)

法と経済で読みとく雇用の世界(新版) 〜これからの雇用政策を考える

 「恭子も、大人である。妻子ある男性と恋に落ちることがどういうことかわかっているつもりであったが、恋に落ちれば、もう止まらない。」

 この本の249ページから引用しました。タイトルは、「第11章 快楽の代償 服務規律」です。

 一瞬、不倫小説を思わせますが、内容はいたって“マジメ”です。著者自身も記述していますが、「理論的な水準は落とさず」、「普通の人が読んで理解できるぎりぎり」のラインを目指したそうです。ですので、少々難しいのかもしれません。しかし、この一風変わったテーマ設定と論理的な解説内容のギャップが、非常にユニークな構成で面白く感じます。労働法と労働経済という、すれ違いが多いと言われる学問分野の協働成果として高い評価を受けており、初版本が“エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10”に選ばれたことで一気に注目の的になった本です。

 アカデミックに雇用・労働の分野を学んでみたい。けれでも、難しそうなのでつい敬遠してしまう。そんな人が面白いテーマ設定の力を借りて読むことができる書籍かもしれません。 

 

 

著    者:大内伸哉、川口大司

出 版 社:有斐閣

発 売 日:2014年1月

カテゴリー:学術書(労働法と労働経済)

新しい労使関係のための 労働時間・休日・休暇の法律実務 [全訂7版]

 『採用から退職までの法律知識』は、もう読みましたか?

 労働法のバイブルとして名高い書籍ですので、既に熟読されている人も多いことでしょう。実は、もう1冊、姉妹本とも言うべき実務書が、この本です。

 “採用から退職までの法律知識”は、タイトル通り人事全般の解説書になっていますが、その労働時間関連の“部分”を更に詳細に述べたものです。かの本も1,000ページを超えるボリュームですが、この本はそれ以上で、机に寝かせて置くよりも、立たせておいた方が使いやすい、という本です(そして重い)。

 事業場外みなし労働や裁量労働など、“もう一言の説明”が欲しい人、または、労働基準法に関する本を何冊も読んだけれども、未だ満足できない納得できない、そんな人向けの本です。労働時間に関して、この本よりも詳細に記述しているものはなかなかありません。人事としての一般的な知識範囲を超えており、プロユースといったところでしょうか。

 労働時間に関する知識を自分の武器として、キャリアを重ねたい人事担当者にお薦めしたいと思います。 

 

 

著    者:安西 愈(あんざい まさる)

出 版 社:中央経済社

発 売 日:2010年7月

カテゴリー:実務書(労働法)

安全衛生・労災補償(第4版)

 “衛生管理者の選任届を見せていただけますか?”

 労働基準監督官の定期調査では、このように言われます。そして、衛生管理者だけでなく、産業医の選任届の控えや安全衛生委員会の議事録など、分かっていながら忙しいあまり、後回しになっている企業がたくさんあるようです。その結果として、是正勧告書で指摘されているケースをよく見かけます。

 安全衛生管理体制について説明している書籍は非常に多いと思いますが、知りたいことが書いてあるものは意外に少ないのではないでしょうか。数多く出版されているのは、“労働法入門”のようなタイトルで、安全衛生については、あまり詳しく説明されていないように思います。かといって、労働安全衛生法の全てを勉強するには、手間ひまがかかり過ぎます。そういう時に、コンパクトでありながら、ある程度(一言多く)記述している、この本は大変便利です。

 Q&Aの形式で入門書のような出で立ちですが、最低限必要な情報は網羅されていると思われますので、忙しい人事担当者向けの本と言えるかもしれません。

 

著    者:井上 浩/吉川 照芳

出 版 社:中央経済社

発 売 日:2009年5月

カテゴリー:実務書(安衛法と労災保険法)

残業手当のいらない管理職

 “名ばかり管理職”、心配ですか?

 一世を風靡したこの問題ですが、未だ安心できない人も多いのではないでしょうか。

 人事担当者であれば、“管理監督者”という言葉を耳にタコができるほど聞かされるはずですが、完璧に理解できているかどうかは微妙な人もいるはず。著者は、この書籍の前文で“管理監督者”という略称の廃止を主張し、イメージから入ることの危うさを指摘しています。その上で、“管理職” と“管理監督者”の違いや、“管理監督者”が指すものを労働基準法からだけでなく、通達や判例を踏まえて丁寧に説明してくれています。元労働基準監督官だけあって、労働行政の現場を踏まえた解説と27個のQ&Aは、読者にとって大変勉強になるものです。また、第4編では「企業の対応」という視点から解説しており、人事担当者向けの本と言えるでしょう。

 この問題に関する優れた書籍は多々ありますが、その中にあってもシンプルで読みやすい一冊です。この機会に管理監督者とは何かを、基本からしっかりと身につけたい人事担当者へお薦めしたいと思います。

 

著    者:中川 恒彦

出 版 社:労働法令協会

発 売 日:2009年2月

カテゴリー:実務書(労働法)

詳説 労働契約法 [第2版]

 「小さく生んで大きく育てる」

と、労働契約法の成立時に、この書籍の著者の1人である菅野先生は、おっしゃったそうです。

 労働契約法は施行時点で全19条、非常に小さな法律です。新しいことが書いてあるわけではなく、判例で既に固まっているものを、法律の形にしただけだと非難する人もいたようです。しかし、この法律も改正法が成立し、順調に育っているといえるのかもしれません。

 労働契約法は、就業規則の不利益変更、解雇、雇い止め、など人事担当者として熟知しておかなければならないものが盛りだくさんです。しかし、文章量は少なく条文を読んだだけでは、その背景にあるものを理解することはできないでしょう。ですので、何らかの解説書が必要になります。

 この書籍の巻末には、研究会の報告書や審議会の答申などが、参考資料として付属しており、法成立までの経緯を追うことも可能です。日本の労働法を代表する3人の研究者による書籍であり、クオリティに心配はありません。

 この機会に、労働契約法をマスターしたいと思われる人事担当者にお薦めしたいと思います。

 

 

著    者:荒木尚志、菅野和夫、山川隆一

出 版 社:弘文堂

発 売 日:2014年5月

カテゴリー:学術書(労働法)

日本の雇用と労働法

 本を嫌いな方にお薦めします。だって新書ですから・・・。

 著者である通称“hamachan先生”といえば、超一流の研究者でありながら、キングブロガーの異名を持つ一風変わった出で立ちの方です。この先生のホームページをチェックしている専門家も多いことでしょう。

 日本はメンバーシップ型の雇用契約を結ぶ国であり、欧米流のジョブ型の雇用契約とは異なる雇用システムを持つ。ここから、この本はスタートします。この“メンバーシップ型” 雇用契約は、一言で日本の雇用システムの多くを物語っています。

 法政大学の授業用に執筆されたとのことですが、新書でありながら雇用システム、歴史、労働法と、よくこのスペースに押し込むことができると感心させられます。新書とは異なる次元に存在する書物だと思った方が良いでしょう。

 労働法を苦手としている人でも、この本なら好きになれるかもしれません。それだけ、分かりやすく面白く、深く、本当に勉強になる本です。

 

著    者:濱口 桂一郎

出 版 社:日本経済新聞出版社

発 売 日:2011年9月

カテゴリー:新書(雇用と労働法)

労働法 [第11版 補正版]

 “素人さん”には、お薦めできない、この1冊です。

 著者である菅野先生は、この人の法解釈が変わると判例も変化すると言われるほどの大物中の大物です。分かりやすく記述されてはいますが、その分量や内容の濃さから、片手間に読むことはできない書籍だと思われます。

 極めたい人には避けて通れない文献ですが、労働法を人事の1分野と考える人にはヘビーかもしれません。とりあえず、体系的に労働法をおさえたいというのであれば、他にも分かりやすい書籍はたくさんありますので、そちらを読んでからにしても遅くはありません。

 この本は、労働法関連の書籍を何冊か読み、さらに深いめたい、自分の知識を整理したい、という知的欲求の旺盛な人に向いているといえるでしょう。この機会に、根性を入れて読破してみるのも良いかもしれません。

 たくさんの識者からのお墨付きがあり、クオリティは保証済みです。

 

著    者:菅野 和夫

出 版 社:弘文堂

発 売 日:2017年2月

カテゴリー:学術書(労働法)

トップ・ミドルのための採用から退職までの法律知識 [14訂]

 労働法の弁護士では、ナンバー1とされる安西愈先生の書籍です。

 安西先生は、素晴らしいキャリアをお持ちの方で、高校卒業後、労働基準局で仕事をしながら中央大学法学部の通信教育課程を卒業、労働基準監督官として勤務の後、司法試験に合格し弁護士登録をされています。この経歴からしても尊敬に値する人物だと感じさせられます。

 この本はタイトルにある通り、採用から退職に至るまでの企業内で起こる様々な人事問題を網羅しており、人事のバイブルとまで呼ばれる実務書です。様々な法改正にもタイムリーに対応しており、現在14訂ということからしても、万人に評価されたロングセラーだということがよくわかります。

 この本は人事担当者に限らず、若手からベテランまで読者を選びません。また、1,000ページを超えるボリュームとなっていますので、通読する時間のない人には、問題への対応の都度、事典として利用することも有意義だと思われます。

 他の参考書を数冊購入する位なら、これを手元に置くだけで十分だと言ってよいでしょう。人事部署には、必ず常備すべき実務書と言っても過言ではない、究極の1冊です。

 

 

著    者:安西 愈(あんざい まさる)

出 版 社:中央経済社

発 売 日:2013年9月

カテゴリー:実務書(労働法)

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