年次有給休暇の申請理由

Q.年次有給休暇の申請書に理由を書かてもよいです

A.書かせることはよいとしても、理由による取得制限は問題です。

 年次有給休暇の申請書に理由を書く欄があるのをよく見かけます。これ自体は問題ないと思います。ただし、理由によって承認をしない、ということになると問題です。最高裁判例(白石営林署事件 昭48.3.2)では、「年次休暇の成立要件として、労働者による『休暇の請求』や、これに対する使用者の『承認』の観念を容れる余地はないものといわなければならない。」とされていますので、会社の許可を得る必要がないことは明白です。このような場合、会社の保持する権限は「時季変更権」のみということになります。時季変更権とは、“事業”の正常な運営を妨げる場合に年次有給休暇の取得“時季”を変更させる権限です。これは、会社の“事業”であり、個人の業務や小さな組織レベルの話ではないため、時季変更権を行使できるのは余程の場合ということになります。結果として、時季変更権が行使されない限り年次有給休暇は自動的に成立することになります。ちなみに「時季」には意味があり、季節をまたいで変更することができるといわれています。

 そうすると、現場の上司は困ってしまう場合があるかもしれません。そのような時は、時季変更の“申込”をするとよいでしょう。申込・相談は自由ですから、上司が部下にお願いをすることになります。もちろん部下に拒否されればそれまでですが、“お互いさま”の部分もあるでしょう。法律で議論するのではなく運用面で支障がないようマネジメントすることになると思います。マネジメントとは、運用することなのかもしれませんね