勤怠管理と固定残業代

Q.勤怠管理を簡便化するため、固定残業代にすることは問題でしょうか?

A.違法ではありませんが、毎月精算する必要があるでしょう。

 時間外労働に関する割増賃金について、例えば月20時間相当として月額固定の手当として支給するケースがあります。これ自体は、違法ではありません。

 固定残業代について判例では、「通常の賃金部分と時間外・深夜割増賃金部分が明確に区別でき、通常の賃金部分から計算した時間外・深夜割増賃金との過不足額が計算できるのであれば、その不足分を使用者は支払えば足りると解する余地がある。」(徳島南海タクシー事件 高松高裁判決平11.7.19、最高裁三小決定平11.12.14)とされています。つまり、時間外手当を月額で固定するためには、①月額固定額が何時間分に相当するかを事前に明確にすること、および、②実際にした残業時間と予定していた残業時間を月ごとに精算し、実際の残業時間が上回った場合には差額を支給すること、がその要件となるわけです。人件費を抑制するための施策として、固定残業代とすることには意味がないということになります。

 一方、日本ケミカル事件(最高裁一小判決30.7.19)では、採用条件確認書の記載や説明の内容等で根拠が明確であり、実際の勤務状況と大きくかい離しないのであれば違法にはならない旨の判断がされています。前出の判例の判断枠組みを緩和しているようにも見えますが、実務上は前記2要件を踏まえた方が無難と思われます。

 また、会社は労働時間を把握することが要請されており(平13.4.6基発339号)、時間外手当を月額で固定化したからといって、残業時間を管理する手間を省くことはできません。そして、2019年4月1日施行の改正安全衛生法では、法律として初めて労働時間の状況を把握する義務が定められましたので注意が必要です