年功賃金の理論的背景
Q.年功賃金を改定して、担当している仕事に応じた賃金を支払うことは当然だと思うのですが、年配従業員から反対意見が強く出て困っています。どうすべきでしょうか?
A.年功賃金制度を見直す企業は多くあると思われますが、まずは正しい理解から出発すべきように思います。
年功賃金の理論的説明には諸説ありますが、労働経済学では”投資と回収モデル”を用いて説明し、定年制と合わさって定説になっています(左図)。説明が複雑になるので、ひとことで言うと、生涯を通じて投資(賃金)と回収(会社への貢献)が定年という精算時点で釣り合うものが、年功賃金および定年制だと説明するものが有力です。
つまり、中高年になるまでは会社への貢献よりも低い賃金、中高年になってからは、貢献よりも高い賃金を受け取り、その貸し借りを清算する時点が定年だというわけです。 そうだとすると、年配社員は過去に預けた賃金を回収する局面にきているだけで、不当に高い賃金を得ているわけではない、ということになります。
経済情勢が厳しい中、会社が積極的に賃金制度を管理したいと思うことは誰にでも分かる今日的課題です。しかし、年功賃金を正しく理解すれば、年配社員に対して丁寧に説明する必要性も感じるでしょう。会社の経営からどうしても、年功賃金を改定せざるを得ないのであれば、やはり、時間をかけながら、その必要性を丁寧に説明することが重要だと思います。