年功賃金の理論的背景

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年功賃金制度を改定する場合、肯定的なのは若手従業員で、年配者は否定的という構図になるのが普通です。年配者は既に年功賃金制度の恩恵を受けており、制度の改定となれば、賃金が下がる可能性も大きくなるので当たり前でしょう。しかし、年配社員が反対することは自分勝手なのでしょうか。

 年功賃金の理論的説明には諸説ありますが、労働経済学では”投資と回収モデル”を用いて説明し、定年制と合わさって定説になっています(左図)。説明が複雑になるので、ひとことで言うと、生涯を通じて投資(賃金)と回収(会社への貢献)が定年という精算時点で釣り合うものが、年功賃金および定年制だと説明するものが有力です。

 つまり、中高年になるまでは会社への貢献よりも低い賃金、中高年になってからは、貢献よりも高い賃金を受け取り、その貸し借りを清算する時点が定年だというわけです。 そうだとすると、年配社員は過去に預けた賃金を回収する局面にきているだけで、不当に高い賃金を得ているわけではない、ということになります。

 経済情勢が厳しい中、会社が積極的に賃金制度を管理したいと思うことは誰にでも分かる今日的課題です。しかし、年功賃金を正しく理解すれば、年配社員に対して丁寧に説明する必要性も感じるでしょう。会社の経営からどうしても、年功賃金を改定せざるを得ないのであれば、やはり、時間をかけながら、その必要性を丁寧に説明することが重要だと思います。