定期昇給とベースアップ

Q.賃上げ5%は達成可能でしょうか?

A.経営サイドの英断が必要になりそうです。

 毎年春が近づくと「定昇ベア込みで●円(●%)獲得」などと春闘のニュースが流れます。ベアが注目されるようになったのは比較的最近のことだと思います。長期におよぶ景気の低迷で、ベアの実務を経験したことのない人事担当者がいてもおかしくありません。

 いわゆる“賃上げ”は、定期昇給とベースアップで構成されます。前者は人事制度上のものであり、後者は交渉等で決定されるものです。定期昇給は、評価制度と賃金制度を運用した結果、半自動的に上昇することになり交渉の必要はありません。一方、ベースアップは賃金表(ベース)の書き換えのことであり、消費者物価の変動による実質賃金の確保などの観点から労使交渉で議論が交わされるわけです。ベースアップは交渉等に基づくため交渉相手である労働組合のない企業では実現が難しいものだと思われます。

 「賃金引上げ等の実態に関する調査(2021年)」によると賃上げは1.9%になっています。仮に賃上げ5%を達成するためには、この公表値に対してさらに2.7%程度のベースアップを乗じることが必要です。労働組合の推定組織率が16.9%(2021年公表値)と低迷する現状においては、労使交渉に委ねることで社会全体のベースアップを実現することは困難かもしれません。大幅な賃上げを達成するためには、経営サイドの英断が必要になりそうです。