賃金とは何か―戦後日本の人事・賃金制度史

 「職能資格制度」の生みの親。

 楠田丘と言えば、泣く子も黙る賃金の専門家。齢を重ねても衰えを知らない鉄人です。たくさんの人事担当者が楠田理論を学び、育ったことでしょう。その楠田先生の伝記を通じて、“賃金とは何か”に迫る歴史本とも言える書籍です。

 皆さんは、オーラルヒストリーって、ご存知ですか? オーラル=口述、ヒストリー=歴史で、ヒアリングを通じて政策情報に関する遺産を学問的に後世へ伝えるために、実施されている学術的プロジェクトです。この本は、研究者が専門家にヒアリングをした結果を文章に残し、研究活動に役立てていこうという試みなのです。

 このオーラルヒストリーという手法をもって、第二次世界大戦後の日本の人事・賃金制度がどのように変化していったかを、生き字引である楠田先生の記憶を辿り明らかにしていくことで、手に取るように当時の状況を把握することができます。

 賃金の歴史を学びたい若手人事担当者、または、楠田理論と共にキャリアを重ねた人事担当者が自分の職業人生を振り返るためにも、有意義な書物だと思います。

著    者:楠田 丘

出 版 社:中央経済社

発 売 日:2007年4月

カテゴリー:学術書(オーラルヒストリー)