日本産業社会の「神話」 〜経済自虐史観をただす

 「あなたの誤解が日本を衰退させる!」

 この本の“オビ”に書かれたキャッチコピーです。私たちが当然と思っていること、それは迷信であり、“他国の冷静、的確な状況把握”、“他国と日本を直接比較した研究結果の活用”が重要だと、著者である小池先生は述べています。

 この書籍の論点からすると中心ではないかもしれませんが、人事担当者の立場からすると、次の神話は気になるところでしょう。

 ●日本の人事評価は中心化傾向が強すぎるが、アメリカの人事評価はメリハリが効いている、という神話(p.35)。

 ●日本の賃金は属人給だが、アメリカの賃金は職務給である、という神話(p.96)。

 これらの内容は、著者が述べるように、“証拠がやや足りない”部分もあるのかもしれませんが、それでも十分に説得力を持って語りかけてくれます。日本にはびこる神話を批判的に見つめ直す良い視点を与えてくれる書籍ではないでしょうか。また、平易な文章で書かれており、労働経済学を専門としない人でも気軽に読むことができる本でもあります。

 今まで神話に煩わされてきた人事担当者にとっては、“痛快時代劇?”を見るように、スッキリとする一冊になるかもしれません。

著    者:小池 和男

出 版 社:日本経済新聞出版社

発 売 日:2009年2月

カテゴリー:経営書(労働経済)