社労士のための労働事件 思考の展開図

 弁護士から社労士への助言です。すなわち、人事担当者にも有意義な書籍です。

 論理的な法律の書籍というよりは、さまざまな運用の感覚について理解することができます。そのため、観念的に書かれている部分があり、読み出した直後は買って失敗だったと一瞬思いました(ごめんなさい)。しかし、読み進めていくと、とても有意義な書籍だと実感します。

 例えば、パワハラは○○円位、セクハラは○○円位など、解決金額の目安が載っています。著者の実感に基づくものなので確実ではありません。そもそも裁判などの紛争はケースバイケースであり、相場に言及することは著者にとってリスクがあるはずです。それを書いてくれるのだから参考になります。読者の自己責任という視点で読めば十分に参考になります。

 パワハラがあった場合には、その行為があった時点で直ちに指導書を出しておくことが重要だと書いてあります。口頭では、事後的に指導内容を確認できないからです。最終的に退職勧奨を提示するときの資料にもなりますので、面倒でも形にしておくことが重要だと著者は指摘します。その「業務指導書(例)」もあります。また、「パワハラやセクハラの加害行為の立証という目的であれば、秘密に録音されたものでも一般的に証拠」になるので、スマホなどで秘密録音されているものだと考えた方が良いそうです。

 その他にも「休職に関する確認書」や「退職勧奨の書面」などの事例や使い方の解説もあり、実務に役立つ内容になっています。“運用”という視点において優れた書籍だと思います。 

著    者:島田 直行

出 版 社:日本法令

発 売 日:2023年10月

カテゴリー:労働法(実務書)