雇用区分と法改正の影響

Q.労働契約法や高年齢者雇用安定法の改正は、どのような影響を与えるのでしょうか?

A.正社員や有期雇用社員等、それぞれの役割を明確にする必要性が高まっています。

 企業によって異なるとは思いますが、有期雇用社員が正社員に登用されるハードルは高く、社員登用制度が存在したとしてもガラスの天井に阻まれることが多かったのではないでしょうか(左図左側)。そこで、労働契約法は“無期転換社員”という中間ゾーンを設けることで、正社員化へのハードルを引き下げると伴に、正社員へ転換しない場合でも期間の定めなく安定的に働くことができる雇用社会の実現を意図したわけです(左図右側)。

 一方、高年齢者雇用安定法が改正されたことで、多くの企業で希望者全員(原則)が65歳まで継続雇用されることになりました。これは期間の定めのない正社員が、有期雇用社員に転換することを意味しますので、大きな変動です(左図右側)。

 これらの法改正は、期間の定めの“ある”労働契約と、“ない”労働契約を相互に新しい雇用区分へ導きますので、労務管理は当然に複雑化するでしょう。例えば、有期雇用社員から無期転換した社員は、正社員のように長期間働くことになりますので、モチベーション確保の視点から、定期昇給や退職金制度を導入する必要があるかもしれません。また、長期雇用は長い時間をかけて能力開発をすることができますので、正社員だけでなく“無期転換社員”にも、より重要な仕事を任せることを可能にするでしょう。一方、正社員から定年後再雇用になる社員は、企業の中で次第に大きなウエイトを占めていくでしょうから、この労務管理の上手下手が、会社の業績に影響を及ぼすといっても過言ではありません。

 以上のように期間の定めのアリ・ナシという大きな線引きが変動しているわけですから、改めてそれぞれの雇用区分に対して会社が求める“役割”を明確にすべきタイミングが来たのかもしれません。