労使協定と労働協約の違い

Q.賃金の現物支給には労使協定が必要でしょうか

A.労使協定で現物支給することはできません。労働協約が必要です

 賃金の支払いには、次の「賃金支払の5原則」と呼ばれるルールがあります。

 「①通貨 ②直接 ③全額 ④毎月1回以上 ⑤一定の期日」

 労働基準法第24条は、労使協定を締結した場合には「賃金の一部を控除して支払うことができる」と定め、「③全額」払いの例外として賃金控除を許しています。仮に、この労使協定がなければ、生命保険料や財形貯蓄の給与天引きすらできないことになります。

 また、通貨以外のもので支払うことにも言及し、「①通貨」払いの例外を定めていますが、その場合には「労働協約に別段の定めがある場合」と記述しています。ここでは、従業員代表者を選出して締結する労使協定が想定されていません。本来、労使協定は罰則の適用を免れるための「免罰効果」を発揮するものであり、私法的効力を有するものではありません。この点で労働協約とは異なります。労働協約は、労働組合と締結するものなので、労働組合の存在しない企業では、賃金の現物支給をすることはできないことになります。