労働審判制度の利用者調査 〜実証分析と提言

 “早くて、おいしい。” 

 牛丼ではなく、労働審判制度の満足度です。この書籍は、東京大学社会科学研究所の実施した「労働審判制度利用者調査」について、分析・提言としてまとめられたものです。労働審判制度については、“和解金は?” “弁護士費用は?” など、利用したことのない企業にとっては分からないことがたくさんあります。労働審判はその迅速性から大変高い評価を受けていると言われてきましたが、本当はどうなのかを教えてくれる書籍です。

 例えば、解決金については、使用者側・労働者側とも全体の約8割が200万円未満の金額帯に属し、結果の評価については、労働者側では59.5%が「満足している」と回答しているのに対し、使用者側では52.5%が「満足していない」と回答しており、結果の評価が逆転しています。また、弁護士費用については、使用者側・労働者側とも約半数が“高い”と回答しており、その理由についても丁寧に考察されています。

 分析編では経済学的アプローチからやや難解なところもありますが、貴重なデータのオンパレードですので、個別労働紛争が気になる人事担当者にとっては、必須の1冊といえるかもしれません。

著    者:菅野 和夫、仁田 道夫、佐藤 岩夫、水町 勇一郎 編著

出 版 社:有斐閣

発 売 日:2013年3月

カテゴリー:学術書(労働審判の制度分析)