始末書不提出と再懲戒処分

Q.始末書の提出を命じたのですが、従わない社員を再度懲戒することは可能でしょうか?

A.始末書は強制できませんので、業務報告書としての提出を求めると良いでしょう。

 懲戒処分には、「戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨退職、懲戒解雇」などがあり、就業規則等でどういった場合に懲戒処分になるかの事由が列挙されている必要があります。企業によって懲戒処分の種類や呼び方は多少異なるようですが、口頭によるものが「戒告」、始末書を提出させるものが「譴責」と呼ばれることが多いようです。

 この中で比較的軽い処分である譴責は、将来を戒めるために始末書の提出を伴うことが多いと思われますが、本来、思想について強制することは許されないことですので、始末書を提出しないからといって更に懲戒処分を課すことはできません。この点につき、代表的な裁判例である福知山信用金庫事件(大阪高裁 昭53.10.27)では、始末書の「提出の強制は個人の良心の自由にかかわる問題を含んでおり」、「提出しないこと自体を企業秩序に対する紊乱行為とみたり特に悪い情状とみることは相当でないと解する」とされています。

 譴責処分はその告知をもって既に成立していますので、始末書の提出要請に本人が従わなかったとしても仕方のないことでしょう。ただし、始末書が“ことの顛末”を記述した業務報告書であれば話は別です。将来を戒めるために提出を求めるものではなく、企業として事実確認のために、経緯やその顛末を報告させることは、業務命令として成しえます。この業務命令に従わないのであれば、改めて懲戒処分の対象にすることは可能です。