実務の現場からみた労働行政
労働法弁護士として有名な著者が、「サービス残業、偽装請負、名ばかり管理職」の3つの側面から語ったものであり、行政指導を是として解説する他の書籍とは一線を画しています。目次を見ると、次のようなタイトルが並んでおり、これだけでも他の書籍とは違う雰囲気を感じます。
「 行政には「頭を下げていうことを聞くな」 」
「 確定していない判決に振り回されてはいけない 」
「 自社の足元をしっかり見る 」
「 問題の本質は労働者の「安全と健康」にある 」
やや過激な表現もありますが、いちいち納得させられる解説がなされていると思われます。
サービス残業問題で悩む人事担当者もいらっしゃるでしょう。この書籍の123ページ以降では、サービス残業に関する遡及支払期間は、2年間ではなく3箇月間を前提とするべき、との貴重なアドバイスがされています。ひょっとすると、朗報になるかもしれません。その他、管理監督者についても詳細に解説されており、他の専門書よりも一歩深く踏み込んでいると評することができるでしょう。
終盤のページには、次のような記述があります。「もう還暦を迎えたのですから、「労働行政被害110番」をつくりたいくらいなのです。」 なかなかここまで、言う人は少ないでしょう。法律を順守しようとするがゆえに、行政の行き過ぎた指導に警鐘を鳴らしているのだと思います。労働法に関する書籍としては、珍しいタイプだとは思いますが、違う角度から臨むことで、人事担当者としての実務能力を高めてくれる書籍といえるでしょう。
著 者:石嵜信憲
出 版 社:中央経済社
発 売 日:2009年6月
カテゴリー:実務書(労働法)