労働法 第7版

 今までの労働法学者とは、一味違います。

 ホテルで実施されるようなセミナーでもジーンズで登壇し、この人は本当に東京大学の教授なのだろうか、と疑問に思わせておいて、カラタケを割ったような解説に頷かされてしまいます。労働法は難しいと感じても良いはずなのに、あまりそういう感覚にとらわれないのは、著者の情報処理能力とそのルックスが、スマートだからかもしれません。このような著者が執筆した労働法のテキストが、この書籍です。

 労働法のテキストでありながら、第1編では労働経済学が登場し、いわゆる三種の神器と呼ばれる「長期雇用慣行、年功的処遇、企業別労働組合」が解説されています。また、労働経済学の重鎮である小池和男先生の「仕事の経済学」から日欧比較の賃金グラフを引用し、年功賃金を分かりやすく解説してくれています。著者曰く、「労働法をめぐる問題を考察するにあたっては、その基盤にあるものに思いを致すことが重要」だからだそうです。このような読み手に対する配慮もあり、非常に分かりやすいと評判で、既に第7版になりました。

 労働法のテキストと言えば、まず思い浮かぶのは菅野和夫先生の「労働法」ですが、そのボリュームに圧倒されハードルが高いと感じる人事担当者も多いかもしれません。そういう場合は、まずこの書籍から読んでみるのも良いでしょう。ただし、この書籍も500ページを超えていますので、それなりの努力は必要です。体系的に労働法を理解するために本気で勉強したいが時間も節約したい。そのような人事担当者に向いているかもしれません

著    者:水町勇一郎

出 版 社:有斐閣

発 売 日:2018年3月

カテゴリー:学術書(労働法)