グループ経営の就業規則

Q.グループ経営強化のため、就業規則を統一することに問題はありますか?

A.“不利益変更”と“コストアップ”に注意が必要です

 複数の企業が一つのグループを形成し、機動的な人員配置や効率的な人事政策を実現するために、就業規則を統一するケースがあり得ます。複数の企業間の就業条件を統一するわけですから、合併に準じたスタンスが必要になるでしょう。ここで問題となるのは、“不利益変更”と“コストアップ”だと思われます。

 よくいわれるのは、就業規則の不利益変更の問題です。就業規則について労働契約法第9条は、労使の合意なく従業員の不利益に変更できない旨を定めています。そして、同第10条ではその例外を定めていますが、不利益変更は相当にハードルの高い問題です。反対に、従業員の利益になる変更であれば、もちろん労働契約法の問題はありませんが、コストアップの可能性がありますので、これも簡単な話ではありません。

 このような場合、賃金表を除いて統一する方向性が考えられます。“不利益変更”と“コストアップ”をクリアするための現実的な選択だろうと思われます。ただし、この場合であっても問題になることがあります。例えば、休職について子会社が親会社の水準に合わせた結果、体力の強くない子会社にとっては、重荷になってしまうことがあります。特に最近では、メンタルヘルス等で休職をする従業員が増えていますので、賃金表だけでなく休職等についても、よく吟味する必要があるでしょう。

 なお、グループ企業をあたかも一つの企業として一体運用した場合には、稀なケースではありますが“法人格否認の法理”といわれる考え方が適用される場合があります。例えば、親会社が子会社の人事政策の決定に過度に関与し、子会社の法人格が形骸化していた場合には、親会社が使用者に当たるとして、子会社の労働組合から労使交渉を挑まれるケースも考えられますので注意が必要です