職務評価と役割評価
A.職務評価は「仕事基準」、役割評価は「仕事+人基準」だと言えるでしょう。
役割評価は、ファジーな「役割」に基準を置くため企業によって千差万別だと思いますが、能力評価と職務評価をミックスしたものと言えるのではないでしょうか。左図をご覧ください。左に人(能力)基準、中央に役割基準、右に仕事(職務)基準を置き、人事制度の三大要素である等級・評価・賃金制度との関係を表したものです。
人基準の代表的な評価制度が能力評価でしょう。基軸が仕事ではなく能力で評価されるために、仕事の分担に融通性を持たせられるので少人数で業務を遂行でき、人事異動もしやすく柔軟な運用ができます。その反面、年功的に運用されると人件費の面で経営を圧迫することがあります。
その対抗馬として挙げられるのが、仕事基準の職務評価でしょう。職務そのものが評価対象なので、仕事と賃金がマッチしており人件費が上ブレしにくいという最大のメリットがあります。その反面、仕事の分担が細部にわたり明確なので業務遂行に人数が必要でポテンヒットが出やすくなります。かつ、職務給であれば賃金の高い仕事から低い仕事への人事異動は困難です。本来の職務評価は、仕事の出来栄えを評価するものではなく仕事そのものの価値が「事前に」評価されている点に注意が必要です。評価期間を設けて個人の仕事を「事後に」評価するのではなく、もともと評価済みの仕事を従業員に担当させるものです。そのため職務給が可能になるわけです。
役割評価は、能力評価と職務評価の持つメリットを享受した折衷案と言えるでしょう。人基準と仕事基準のいいとこ取りをした結果、どのようにでも運用することが可能になります。そのため、運用力に秀でた管理職が揃っていないと使えない評価制度になってしまう可能性があります。