アメリカ自動車産業 〜競争力復活をもたらした現場改革

 「アメリカの自動車産業では、〜「職務給」の徹底により、能力主義の導入ができないことがやはり職場改革の障害となっているのである。」(P197)

 これは、ブルーカラーのお話です。日本は“査定つき定期昇給”という能力主義、アメリカは先任権という年功序列になっていることが書かれています。このことは、知っている人は当然に知っている、知らない人は意外に知らない事実です。

 この書籍を読んでいると「現代日本の報酬制度の最大の特徴は、ブルーカラーのホワイトカラー化」だと、労働経済学の重鎮である小池和男先生が、著書である『仕事の経済学』で述べていたことを思い出します。「ブルーカラーのホワイトカラー化」とは、本来であればホワイトカラーに適用すべき“査定つき定期昇給”という能力主義を、ブルーカラーに対しても日本が実施してきたことを指しています。反対にいうと、欧米では職務給であるが故にその“査定つき定期昇給”がブルーカラーにはあまり適用されてこなかったということです。

 著者は、このような歴史的経緯も踏まえながら、アメリカの自動車産業の代表であったビッグ3の最近の状況を交えてわかりやすく解説してくれています。数値の上では、GMの完全復活が脚光を浴びているようですが、製造現場では試行錯誤を繰り返しており、日本の自動車産業に追いつけない様子も描かれています。

 自動車産業を通して、日米の仕事に対する考え方の違いも理解できとても勉強になります。自動車産業に関係する人事担当者にとっては、外せない一冊といえるかもしれません。

著    者:篠原 健一

出 版 社:中央公論新社

発 売 日:2014年7月

カテゴリー:新書(労働経済)