日本の雇用終了 〜労働局あっせん事例から
日本は解雇規制の厳しい国だといわれることがありますが、本当はそうでもない実態が描かれています。
この書籍は、厚生労働省からデータ提供を受けた研究者が、労働局で扱われた「あっせん」事例について、詳細に事例分析をしたものです。申請内容の内訳では、「雇用終了」が66.1%、「いじめ・嫌がらせ」が22.7%、「労働条件引下げ」が11.2%となっており、「雇用終了」に関する事案が特に多くなっているのがわかります。
まず、気になるのは「あっせん」が成立した場合の解決金額で、72.8%が「40万円未満」で解決しています。また、「10万円以上20万円未満」で解決したものが最も多く24.3%を占めています。労働審判では、全体の約8割が200万円未満の金額帯に属していることと比較すると相場の違いに驚かされます。
その他には、次の記述も気になります。
「雇用終了に至る最大の原因がそれら「能力」自体よりも、会社の側からみて許し難い「態度」の不良性にある」(P103)
「解決金額は当事者の態度(気迫)によって左右される」(P233)
解雇などの問題について判例を参照する人事担当者は多いと思いますが、そういった表舞台に出てこない事例が山のように登場します。労働法の世界だけでは語れない世の中の実態を勉強するのに大変役立つ書籍といえるでしょう。
著 者:労働政策研究研修機構 編
出 版 社:労働政策研究研修機構
発 売 日:2012年3月
カテゴリー:学術書(個別労働紛争)