検証・学歴の効用

 大学を卒業することに意味はない」 わけがない、

ということが書かれています。

 高校から大学への進学率が高まり「大学全入時代」と言われる中、その学歴の効用が疑問視されてきました。しかし、通念に反する実態を統計や調査から教えてくれています。

 まず、賃金構造基本統計調査を用いて「大卒独り勝ち状態」の存在を解説しています。1975年時点では、「中卒〜高卒〜高専・短大卒〜大卒」の各学歴間の賃金格差はほぼ等間隔であったものが、2010年時点では、「高専・短大卒〜大卒」間に大差が開いており、大学卒という学歴の効用が際立って高いことを教えてくれます。

 また、ちょっと変わったところでは、女性にとっての経済的効用という視点で、「正規社員・非正規社員・結婚」という3つの領域において高等教育の効用を分析しています。これによると、専修学校卒は非正規労働者として働いた場合の効用が大きく、短大卒では結婚に関する効用が大きいそうです。そして、「大学は、女子にとってどのような選択をしようとも経済面での有利さをもたらしてくれる「オールマイティー」な教育機会」を与えてくれるようです。

 この書籍では、重回帰分析を用いて分析する場面が登場するので、多少馴染みにくいところがあるかもしれませんが、イメージだけで捉えていた「学歴の効用」について、“気づき”を与えてくれるでしょう。労働政策研究・研修機構の「労働関係図書優秀賞」も受賞しており、採用担当者にとってマークすべき書籍といえるかもしれません。

著    者:濱中 淳子

出 版 社:勁草書房

発 売 日:2013年6月

カテゴリー:学術書(教育社会学)