「就活」と日本社会 〜平等幻想を超えて

 「もう、平等という幻想にしがみつくのはやめよう。 〜平等ではないことを受け入れることで、弱者は弱者なりの生存戦略を考えようではないか。」

 この書籍の最後の言葉です。そして、誠実な提案だと思います。

 新卒一括採用は、「1870年代に日本に大学ができ、もともと、学界や官界を目指していた層に、三菱がアプローチし、慶應義塾大学の学生を採用したのが始まり」だそうです。約150年の歴史があることになります。このような歴史もたどりながら、著者は、新卒一括採用のメリットとデメリットを確認し、先行研究をレビューした結果をコンパクトに提供してくれます。新卒一括採用に係わる人事担当者にとっては、とても有意義な参考書になるでしょう。

 また、著者のいう「弱者」には、2人いるようです。

 まず、一人目は一流大学(高偏差値)ではない学校に通う学生です。たくさんの大企業に応募し選抜に漏れるメカニズムを紹介し、平等幻想を捨てた上で弱者としての戦い方を教えてくれます。もう一人の「弱者」は、中小企業のようです。就職ビジネス会社の提案するままに採用活動を展開しても、結局、大企業に近い手法となってしまうので、ロスが大きいと言っているように感じます。

 諸外国には見られない日本の新卒一括採用の存在を、あらためて考えるよいきっかけを与えてくれる書籍だと思います

著    者:常見 陽平

出 版 社:NHK出版

発 売 日:2015年1月

カテゴリー:学術書と実務書の中間(教育社会学)