全訂版 労務管理における労働法上のグレーゾーンとその対応
“全て”は、言い過ぎだけれども、一理あると思ったものです。この書籍は、人事のグレーな部分に焦点を当てることで、人事担当者の頭の中を整理してくれます。18のテーマが設定されており、中でも「労働時間、名ばかり管理職、不利益変更、退職勧奨、雇止め、同一労働同一賃金、労働者性」などは、グレー中のグレーといえるでしょう。
例えば、何をもって労働時間とするかは、けっこう難しい問題です。「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と言いますが、どのような状態が「指揮命令下」といえるのかというと、だんだんグレーになっていきます。「黙示の指揮命令下」という言葉もあります。上司が明確に残業を指示していなくとも黙って見過していれば、それは労働時間と認定される可能性が高まるでしょう。これは、可能性が高まるのであってケースバイケースのグレーなのです。
この書籍に絶対的で明確な基準を求めることには無理があります。グレーな部分を論理的に突き詰めていっても、シロクロがはっきりするとは限りません。しかし、それでは人事担当者の仕事が止まってしまいます。グレーとは言いながら、いろいろなケースについて考えられる可能性を事前に勉強しておけば、実務に応用することができます。グレーゾーンで悩む人事担当者への処方箋のような書籍といえるかもしれません。
著 者:野口 大
出 版 社:日本法令
発 売 日:2023年3月
カテゴリー:実務書(労働法)