ワーク・ライフ・バランスと有給休暇

Q.「ワーク・ライフ・バランス」には、どのような施策があるのでしょうか?

A.育児休業、短時間勤務、有給休暇の取得促進などが挙げられます。

 2007年12月に「ワーク・ライフ・バランス憲章」およびその行動指針が策定され、具体的な施策として子育てや長時間労働の抑制など様々なものが挙げられています。その中でも女性の活躍推進とあいまって、出産・育児や介護に関するものがクローズアップされていますが、「ワーク・ライフ・バランス」には、年次有給休暇の取得促進も含まれています。2010年6月に改定された行動指針では、2020年までの数値目標として年休取得率70%が掲げられているのです。

 一方、「ワーク・ライフ・バランス憲章」が策定された2007年を含む直近10年間(2005〜2014年)を確認すると、年休取得日数は8.2〜9.0日の間で増減しており、取得率も40%台後半で大きく変化していません(就労条件総合調査2015年時点)。どうやら、「ワーク・ライフ・バランス憲章」の効果は、限られているようです。

 「ワーク・ライフ・バランス憲章」が策定されてから、数多くのセミナーが実施され書籍も出版されてきました。たくさんの会社が熱心に参加し、その施策を推し進めてきたようにみえます。しかし、年休取得への影響は小さいようです。ひょっとすると「ワーク・ライフ・バランス」という“カタカナ”を用いることで、何か新しい理想を実現したような錯覚に陥ってはいないでしょうか。過去には「ファミリー・フレンドリー」という言葉もありましたが、今は聞かなくなりました。

 もし、本当に会社が「ワーク・ライフ・バランス」を定着させたいなら、まずは年休の取得促進に取り組んでみるのはいかがでしょうか。年休の取得が満足にできない会社で「ワーク・ライフ・バランス」と言ってみても始まらないように思います。そのためには、上司が率先して年休を取得する必要があるでしょう。部下は上司をみて行動するからです。このようなことが職場の雰囲気をかたち作り、「ワーク・ライフ・バランス」を定着させていくのだと思います