あっせんの解決金額

Q.労働局の「あっせん」の金額に、目安はあるのでしょうか?

A.個別の事案によりますが、54.0%が20万円未満で終了しています。

 労働局の「あっせん」は、労働局内に設けられる紛争調整委員会が実施するもので、多くの場合1回で終了します。「あっせん」の申請内容では、「いじめ・嫌がらせ」が31.3%と単独では最も多くなっていますが、労働契約の終了に関するものの合計は74.1%であり、大きな割合を占めていることがわかります(重複計上)。そして、労働局の「あっせん」により解決された事件のうち54.0%が「20万円未満」の解決金額で終了しているのです。なお、解決金額の平均値は305,694円、中央値は190,000円であり、“個別労働紛争”という言葉の持つイメージからすると、低い解決金額といえるのかもしれません(いずれも2012年度)。

 個別労働紛争に関するもう一つの代表的な制度として、労働審判制度が挙げられます。これは、裁判所で実施されるものですが原則3回以内で審理が終了するので、裁判に比べれば迅速性に優れた制度といえるでしょう。労働審判で調停が成立した場合、解決金額の平均値は約230万円、中央値は110万円になっています。また、雇用紛争事案に関して、裁判で和解が成立した場合には、解決金額の平均値は約450万円、中央値は約230万円になっています(いずれも2013年)。直接に比較できるデータではありませんが、労働局の「あっせん」とは異なる相場感を認識することができます。

 労働局の「あっせん」は、会社側から申し立てることもできますが、その多くは従業員の側からなされます。弁護士を代理人としないで従業員自身が申し立てるケースが多く、費用については無料ですので従業員のメリットはとても大きなものでしょう。また、一定の解決金額で短期間に終了する可能性が高いことから、会社のメリットも大きいと思います。しかし、「あっせん」を辞退する会社もたくさんあるのです。もし、従業員が紛争の解決手段として労働局の「あっせん」を選択したのなら、前向きに検討することが会社にとって有意義ではないでしょうか。

 (注)データ出所:労働政策研究・研修機構『労働局あっせん、労働審判及び裁判上の和解における雇用紛争事案の比較分析』2015年4月