戦後労働史からみた賃金

 著者の言いたいこと。

 けっして賃金の歴史を語りたいわけではなく、「海外で勝ち抜く賃金の方式を提議したい」と言っています。それを説明するために、まずは誤解を解く必要があるようです。それが、戦後労働史を通して日本の賃金を説明する理由です。“日本の賃金”というからには、国際社会の中での位置づけを確認する必要があるでしょう。そのため、アメリカの賃金と比較することで、日本の賃金の実態を示してくれます。日本は「職能給」であり、アメリカは「職務給」であるという根深い誤解を解消しないと議論が始まらないからです。

 日本企業の賃金には、強みがあるそうです。

 その根拠として提示されるのが、著者が昔から唱える「ブルーカラーのホワイトカラー化仮説」です。端的にいえば、技能系職種に事務系職種の賃金を適用したことが技能系職種の能力開発に大きな影響を及ぼし、生産性を向上させ、日本の優位性を形成したということでしょう。

 これらのことに異論を持たれる人事担当者もいるかもしれません。しかし、この書籍を読むことで、今までの“通念”が吹き飛ぶ可能性もあると思います。グローバルと言う前に、自分の足元を確認するためのヒントがここにありそうです。 

著    者:小池和男

出 版 社:東洋経済新報社

発 売 日:2015年9月

カテゴリー:学術書(労働経済)