日本型人材育成の有効性を評価する ~企業内養成訓練の日仏比較

 人事制度について、フランスと日本の違いを理解することができます。

 国際比較は困難を伴うものですが、これが人事制度であれば更にハードルが上がるでしょう。人事制度は、制度設計だけでなく運用された結果を見なければ何も分からないからです。このような時には、質問紙調査よりも聴き取り調査が有効に機能することがあります。著者は、約3年間を費やし人事スタッフのキャリアについて、フランスと日本の企業に聴き取り調査を実施しています。

 まず、注目されるのは採用です。フランスでは、「カードル」として採用されることが、その後の出世に大きく影響します。いわば“キャリア組”というイメージでしょう。日本のコース別雇用管理の総合職に対応するものだと著者は説明しますが、それよりもエリート色の強いものだと感じます。初任給は、職務内容と出身大学によって決まるそうです。

 127ページに次の記述が出てきます。「評価制度は①業績評価と能力評価から構成され、いずれも年1回実施される。②前者は目標管理制度が、後者は行動プロセス評価あるいは目標管理制度が用いられ、③両評価結果を合わせた総合的な評価結果が賞与と昇給に、能力評価の結果が能力開発に反映される。」細かい部分では、異なる部分もあるのでしょうが、日本の企業と似ているような雰囲気を感じます。

 その他にも、参考になりそうな記述が盛沢山です。他国について学ぶことで初めて日本の特徴を理解することができます。人事制度について見識を深めたいと思っている人事担当者にお勧めしたいと思います。 

著    者:関屋 ちさと

出 版 社:中央経済社

発 売 日:2021年12月

カテゴリー:学術書(人的資源管理)