わかりやすい労働安全衛生管理

 労働安全衛生法は、わかりにくい。

 そう思います。労働安全衛生法は、労働基準法と条文の数はさほど違いませんが、労働安全衛生規則(安衛則)は600条を超えています。また、通常あるはずの施行規則がなく、それが安衛則の中に取り込まれていることや関連の規則が多いことが、わかりにくさに繋がっているのでしょう。

 このようなことから、労働安全衛生法を網羅的に解説しようとすると情報量が多すぎるため、読みやすさを配慮してか、内容を浅く止めている書籍が多いように感じます。この書籍は、労働安全衛生法の全体像を踏まえながら、適度に深くかつ詳細にはなり過ぎず、適当なボリューム感に留めている点で優れていると思います。一方、労働安全衛生管理の分野は変化が激しく、従来からの職業性疾病だけでなく、メンタルヘルス、過重労働または産業医に関する対応などは、喫緊の課題となっています。著書は、元労働基準監督官だけあって、この分野に対しても造詣が深く参考になります。

 製造業に携わる安全管理担当者にとっては、ひょっとするともの足りないと感じる部分があるかもしれませんが、オフィス勤務を中心とする会社の人事担当者であれば、問題なく必要以上の情報レベルに達していると感じるでしょう。“わかりやすい”労働安全衛生管理の書籍として、トータルバランスの取れたお勧めの1冊です。 

著    者:角森 洋子

出 版 社:経営書院

発 売 日:2015年3月

カテゴリー:実務書(労働安全衛生法)