新卒一括採用と若年失業率

Q.先進国の中で日本の若年失業率は、なぜ低いのでしょうか?

A.新卒一括採用が、若年失業率を低めていると言われています。

 完全失業率は、総務省の実施する「労働力調査」で確認することができます。2015年の全体平均では「3.4%」、15〜24歳では「5.5%」になっていますので、若者の失業率は高めといってもよいでしょう。この傾向は、日本だけでなく諸外国も同様です。

 国ごとに事情が異なるため、失業率の国際比較はなかなか難しいものです。しかし、先進7カ国ではILO基準に準拠して失業率を算出しているので、失業の定義が完全には一致しないものの比べることは可能です。比較可能なデータについて、先進7カ国の失業率(2014年平均)を低い順に並べると、日3.6%、独5.0%、米6.2%、英6.2%、加6.9%、仏9.9%、伊12.7%となっています*。私たちの持っているイメージに近い数値といえるでしょう。同様に、15〜24歳の失業率では、日6.3%、独7.8%、米13.4%、加13.5%、英16.3%、仏23.2%、伊42.7%となっており、若者の失業率が高いことに驚かされます。この中で、日本とドイツの若者の失業率は1ケタ台ですが、なぜ低いのでしょうか。

 仮に、日本が欧米のような新卒一括採用の乏しい国であれば、経験のあまりない新卒者が経験豊富な中途採用者と労働市場で競い合うことになり、就職できる可能性が低くなってしまうと言われています。一方、ドイツの特殊性の背景にあるのは、「デュアル・システム」だといわれています。これは、学校に通いながら企業内で職業訓練を受ける本格的なもので、短期間で実施される日本のインターンシップとは異なります。この「デュアル・システム」が、若者の失業率を低く保つことに貢献しているようです。

 新卒一括採用には批判もありますが、世界に誇る日本の慣行だといってよいのかもしれません。そして、この慣行を支えているのが企業の人事担当者なのです。自信をもって新入社員を迎えてよいのだろうと思います。

 * OECD database(http://stats.oecd.org/)“LFS by sex and age-indicators” 2016年3月現在