賃金の振込手数料

Q.銀行振込で賃金を支払う際、振込手数料を控除することは可能ですか?

A.賃金支払の原則に反し、無効と考えられます。

 民法485条では、「弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする」とされており、当事者の合意や慣行がない場合には、支払債務を負っている側が費用を負担することになっています。これを賃金の振込手数料で考えれば、会社が負担することになるでしょう。

 もし、就業規則に「振込手数料を賃金から控除して支払う」規定があった場合はどうなるでしょうか。就業規則は労働契約の一部となりますので、当事者の合意が存在すると考えることができます。民法の考え方からすれば、賃金から振込手数料を控除して支払うことが可能なはずです。しかし、労働基準法24条には、賃金支払の5原則(通貨、直接、全額、毎月1回以上、一定期日払)が定められていますので、全額払いに反することになりこの合意は無効となるでしょう。また、賃金は通貨(現金)で支払うことが原則であり、銀行振込は会社の事務上の都合とも考えられます。そのため従業員の同意があって初めて成立するものですので、振込手数料を控除することにはやはり問題があります。

 常識で考えれば疑問になるような問題ではありませんが、視点を変えて理屈を考えると、ちょっとした法律の勉強になって面白いかもしれませんね