生涯発達の心理学

 「企業にとって中高年は不要か?」

 高年齢者雇用安定法が改正され、年金の支給開始スケジュールに呼応した65歳までの継続雇用が定着しつつあります。しかし、企業にとって定年後再雇用者の活用は改善すべき課題となっているようです。その理由の一つとして、中高年になると頭も固くなり能力が減退するという定説があるのかもしれません。そのようなネガティブ思考になってしまう時、参考になるのがこの書籍です。

 運動能力は、青年期がピークであり中高年になれば次第に衰えていくのが通常でしょう。しかし、知的能力は何歳になっても伸びていくものだ、と次のような説明がされています。

 知的能力には、流動性知能と結晶性知能の2つが存在する。流動性知能とは、図形認識や図形構成などにより測定される能力で、青年後期ないし成人期の初期にピークに達し、中高年期にかけて次第に低下していくことになる。一方、結晶性知能とは、語彙や社会的知識によって代表される能力のことで、老年期まで伸び続けていく知能と考えられている。

 この考え方に従えば、さほど大きな能力減退を気にすることなく中高年の活躍の幅を広げることができるかもしれません。中高年の能力開発や定年後再雇用者の活用を考えている人事担当者にお勧めしたいと思います。 

著    者:高橋恵子・波多野誼余夫

出 版 社:岩波書店

発 売 日:1990年12月

カテゴリー:新書(生涯発達心理学)