労働条件変更の基本と実務

 「第四銀行事件」と「みちのく銀行事件」は、両方とも55歳以降の賃金が減額された銀行の事案です。過半数組合の同意が得られている点も共通しています。しかし、前者では変更が有効とされ、後者では無効とされました。判例中の判例ともいうべき2つの裁判ですが、いわゆる“不利益変更”の問題です。人事担当者なので、私は知っている。けれども、いざ思いだしてみると「何だっけ?」というような事柄をズバッと明快に解説してくれる書籍です。

 就業規則の不利益変更で悩む人事担当者も多いかもしれません。例えば、休職と復職を繰り返す従業員について、前後の休職期間の通算規定を改めて設ける場合です。これは、不利益変更に該当しますので、簡単なことではありません。しかし、不可能というわけでもありません。この他にも、さまざまな労働条件の不利益変更について、裁判例の解説にとどまることなく実務的な対応方法を交えながら、考え方を解説してくれます。

 不利益変更について解説する書籍はたくさんあると思いますが、ここまで分かりやすいものは多くはないと思います。具体的な事例にかなり踏み込んだ解説もされています。また、合併により2社の労働条件を統一する場合などは、少なからず不利益変更の問題がでてきますが、そのような時にも役立つでしょう。久しぶりにアンダーラインを引きまくった書籍です。お勧めできる1冊だと思います

著    者:石嵜 信憲 編著、橘 大樹・石嵜 裕美子 著

出 版 社:中央経済社

発 売 日:2016年9月

カテゴリー:実務書(労働法)