「超」進学校 開成・灘の卒業生 〜その教育は仕事に活きるか

 “良い学校に入れば、人生は順当か?”

 ちょっと興味をそそられますね。著者は、学校の協力を得て開成高校の卒業生2,800人、灘高校の卒業生2,240人にアンケート調査を実施・分析したのが本書です。また、比較を可能とするために首都圏の高校を卒業した男子大卒者にも同時期にアンケート調査を実施しています。

 アンケート調査から気になるところをみてみると、まず、卒業生の職業の中で「医師」が22.0%を占めており、一般大卒の1.0%と比較すると目立った存在になっています。次に、企業勤務者として働く卒業生の内、大企業(5,000人以上)で働くのは、一般大卒者が25.1%であるのに対して、開成・灘の卒業生は52.9%と大きく差が開いています。第3に、企業勤務者の平均年収をみると一般大卒者が782.1万円であるのに対して、開成・灘の卒業生は1,404.2万円と大きな格差が存在します。エリート養成機関と思われる開成・灘の卒業生は、概ね順当な職業人生を歩んでいるようです。

 しかし、そうでもない人も記述されています。「大学受験や就職活動で意にそぐわない選択をすることになったのは、2〜3割。そして、就業後、自分の能力を発揮することができていないと感じつつ働いている者も3割いる」とのことです。エリートに対するイメージが一致する点と異なる点が描写されており、“人生いろいろ”といったところでしょうか。

 人事の本とは視点がやや異なりますが、新卒採用・能力開発に係る人事担当者にとっては、参考になる書籍といえるかもしれません。 

著    者:濱中 淳子

出 版 社:筑摩書房

発 売 日:2016年3月

カテゴリー:新書(教育社会学)