安全配慮義務の範囲

Q.安全配慮義務は、どこまで問われますか?

A.個別の従業員ごとに丁寧な配慮が求められます。

 労働契約法第5条には、会社の安全配慮義務が定められています。ですが、条文には「その生命、身体等の安全を確保しつつ〜必要な配慮をする」と書かれているだけで具体的なことはよく分かりません。会社が、従業員を心配するのはもっともなことですが、これでは困ってしまいます。そこで、労働契約法の施行通達(平20.1.23基発0123004号)を確認すると「生命、身体等の安全には、心身の健康も含まれ」、「必要な配慮とは、〜具体的な状況に応じ」て判断されることが書かれています。ここで注目されるのは、「こころの健康」が含まれている点でしょう。従業員の多くがホワイトカラーの会社であっても、メンタルヘルスまでを含めた安全配慮義務が求められているわけです。

 また、システムコンサルタント事件(最高裁 平12.10.13)では、より具体的なことがいわれています。「具体的内容としては、〜労働者の年齢、健康状態等に応じて従事する作業時間及び内容の軽減、就労場所の変更等適切な措置を採るべき義務を負う」とされています。年齢や日々の体調など人によって異なるものについて、従業員ごとに業務量の調整等、丁寧な対応をする必要があるわけです。

 全従業員個人の健康状態を把握することは、会社にとってハードルの高いものとなるでしょう。しかし、労働契約法の安全配慮義務を履行するためには、管理職による労務管理を通じて日々、的確に実施されなければなりません。人事担当者が安全配慮義務を気使うことは当然ですが、実際には現場の上司が部下の状況に配慮しなければ、実効性は乏しいものになってしまいます。そのためにも、管理職研修などを通じて上司の当事者意識を高めることが重要でしょう