労基署は見ている。

 まるで、小説のようです。

 労働基準監督官が何を考えながら臨検を実施しているかが伝わってきます。著者は、元労働基準監督官でありご自身の半生を思い起こしながら語ってくれます。労働基準監督署の組織・人事異動、様々な経営者や書類送検するときの検事の対応、そして、監督官の人となりが描写されています。

 労働基準監督官には、「公務員の仕事の一つとして監督官をしている者」と「監督官というプライドで仕事をしている者」の概ね2種類の人がいるそうです。そして、仕事として割り切っている人が3分の1、プライドを追求する人が3分の1、残り3分の1はどちらにでも転がる可能性のある人で構成されているとのことです。監督官も普通の人間なのですね。私たちは、勝手に監督官像を膨らませているのかもしれません。これは、内部にいた人だからこそ実感をもっていえることでしょう。

 最近は、元労働基準監督官の書いた書籍がたくさん出版されています。臨検の概要や対応ノウハウを求めるならば、どの書籍を手にしてもハズレは少ないと思います。しかし、労働基準監督署の臨検について、感覚的に迫ってくる書籍は、さほど多くはないでしょう。実務で臨検に関わった人事担当者でなくとも、臨検の臨場感を味わうことができる書籍です。臨検を肌で感じたい人には、うってつけの本だといえます。是非、お勧めしたいと思います。 

著    者:原  論

出 版 社:日本経済新聞出版社

発 売 日:2017年3月

カテゴリー:新書(労働法)