絶対評価と相対評価
A.1次評価は「絶対評価」、2次評価は「相対調整」になるでしょう。
評価制度の運用において、「絶対評価」と「相対評価」のいずれが適切なのか、議論になることもあるでしょう。これは、会社の意思決定の問題であり、どちらの評価であっても構わないと思います。ただし実務では、1次評価は「絶対評価」になるだろうと思います。
例えば、1次評価者である課長の抱える部下の人数を考えます。部下の人数が30人もいれば、十分に「相対評価」は可能でしょう。しかし、少人数の部下を抱える課長が「相対評価」を実施しようとしても、相対的な分布構成をとるのは困難です。組織の構成人数にもよりますが、一般的な日本の企業で一つの「課」に所属する従業員の人数を想像すると、やはり「相対評価」は難しく「絶対評価」にならざるを得ないのではないでしょうか。
次に、2次評価者は「相対評価」ではなく、「相対調整」を実施することになるでしょう。ここでは、「相対評価」と「相対調整」の違いが疑問になるかもしれません。「相対評価」は、従業員を直接に評価し、各従業員を対比することで評価を決定します。一方、「相対調整」は、従業員を直接に評価するのではなく、1次評価者の“甘い・辛い”を間接的に調整する点で「相対評価」と異なります。
例えば、2次評価者である部長は、「絶対評価」を実施した当事者ではありませんので、第3者として客観的に、1次評価者である課長の“甘い・辛い”に気づきやすくなります。どんなに“評価眼”に優れているといっても人間のすることですから、“甘い・辛い”はあるものです。そのため、部長は課長に対してアドバイスを加えて1次評価の再提出を指示します。これは、課長を育成する部長の仕事の一つと言って良いかもしれません。
実務の世界では、スケジュールの制約の中で評価制度は運用されますので、原則通りにはいかないことが多いかもしれません。そうであっても、「あるべき姿」とのバランスを意識した評価制度の運用が求められていると思います。