心療内科産業医と向き合う職場のメンタルヘルス不調

 医師が、人事担当者のために書いた書籍といってよいでしょう。

 第1章では、職場でよく見かける精神疾患として、うつ病やパーソナリティ障害等の類型ごとに、1.医学的特徴、2.労務的問題、3.典型事例、4.対応策の順番で個別に解説する部分が出てきます。この分野に造詣が深くない人事担当者には重宝するでしょう。

 第2章では、厚生労働省の“メンタルヘルス指針”に出てくる「4つのケアと3つの予防」が紹介されています。「4つのケア」は、誰がケアをするのか?について「1.セルフ、2.ライン、3.会社内、4.会社外」に分かれています。「3つの予防」は、「1次:未然防止、2次:早期発見・対応、3次:再発予防」の段階的な対応策です。4×3のマトリックスで捉えることにより、メンタルヘルスケアのフレームを理解することができます。

 第3章は、この書籍の半分を占めるケーススタディです。著者が過去に経験した事例を基に、「従業員の主張」と「人事労務担当者の懸念」を対比させ、どのように対応すべきかを解説してくれます。労働法や労務管理の分野にも踏み込んで書かれており、医師の視点をはるかに超えています。

 この書籍では、人事担当者の視点が強く出されており、会社の安全配慮義務に関心が払われている点でも、医師の書く単なるメンタルヘルス対応本ではありません。労務管理をよく理解した社内の産業医のアドバイスとして読むことができるでしょう。 

著    者:石澤 哲郎  編

出 版 社:第一法規株式会社

発 売 日:2017年12月

カテゴリー:一般書(メンタルヘルス)