日本の会社のための 人事の経済学

 “ジョブ型雇用”を理解するのに役立ちます。

 著者は、ジョブ型の「最も重要なポイントは分業である」と解説します。「一人で全部の作業工程を行えば一日20本もつくることができないが、作業が多数の部門に分割され、分業されることにより、一日10人で4800本以上のビンをつくることができた」とアダム・スミスの「国富論」からビン職人の事例を紹介しています。つまり、仕事のプロセスを細かく分割し単純化することで、生産効率を高めることができるのが「ジョブ型の本質といえる」ようです。

 世の中には、能力主義や成果主義を徹底するためにジョブ型の人事制度を導入する事例があるようです。著者は、この点について次のように批判します。「採用のときにその職務が遂行できるかどうか適切な判断がされていることが前提であり、決められた職務を淡々とこなす、最低限・必要以上のことはやらないというのが、ジョブ型の本来的なイメージなのである。」としています。また、「成果主義=先進的・効率的と無条件に信じることがいかに愚かであるかがわかるであろう。」とも書いています。

 2013年当時、著者は政府の規制改革会議・雇用ワーキンググループの座長として、ジョブ型雇用の普及を掲げていた当事者です。当初、意図していたものとは異なる形でブームとなったジョブ型雇用について、改めて解説したのが本書と言ってよいでしょう。ジョブ型雇用で悩まされる人事担当者の処方箋といえそうで。 

著    者:鶴 光太郎 

出 版 社:日経BP 日本経済新聞出版

発 売 日:2023年4月

カテゴリー:一般書(経済学)