成果主義人事管理オーラルヒストリー ~90年代以降の富士通・NECの制度改革
「成果主義」とは何だったのか。
その昔(1990年代以降)、富士通とNECは他社に先んじて成果主義を導入しました。富士通でいう成果主義とは、「裁量労働制と目標管理制度」のことであり、NECでは「役割等級、賞与原資の部署移管およびコンピテンシー」を指すようです。また、富士通は「労働時間管理からの脱却」、NECは「人件費コストの削減」を目的として成果主義を導入したようです。成果主義という1つの言葉であっても、その中身は相当に異なることが窺われます。
オーラルヒストリーとは、文書資料ではなく聞き手の問題意識に従って当事者から証言を取るスタイルのことです。当時、人事制度の改定に携わった人事担当者に改めてインタビューを実施することで、成果主義の実態に迫ろうとしたわけです。人事担当者たちは、当時を振り返り試行錯誤の経緯を語ります。随所に、ごもっともと思えるような問題意識や悩みも出てきます。そして、自社の成果主義が成功だったのか、失敗だったのかを語ってはいません。それを判断するのは、読者だという位置付けのようにも感じます。
編者の1人である八代充史先生は、「成果主義人事管理は、企業別労働組合、企業主導型人事、出口管理の制約、という3つの点で」長期雇用を前提に緩やかに格差をつける今までの制度に「真っ向から反するものであり、そのために日本的雇用管理制度の下では十分に機能しなかった」とまとめています(P.19)。
そして現在、「ジョブ型」が提唱されています。「ジョブ型」については、本来の用語法とは異なる論説が散見され、多くのケースで成果主義と類似の制度を志向しているようにも聞こえます。この書籍から成果主義の経緯を学ぶことで、「ジョブ型」の意味を改めて考える必要があるでしょう。そのための参考資料として、大きな役割を果たしてくれる書籍だと思います。