人事の成り立ち 〜「誰もが階段を上れる社会」の希望と葛藤

 おもしろい。です。

 この書籍では、サブタイトルにある「誰もが階段を上れる社会」=日本型雇用システムのメリットが強調されています。反対にいえば、諸外国で「階段を上れる」人は限られるということです。例えば、フランスは階級社会であり多くの従業員が階段を上ることはなく、「平社員の昇給率が低く、勤続30年でもせいぜい20%アップ」するのが精一杯だそうです。つまり、出世はしないし賃金はさほど上昇しません。一方、日本ではふつうの正社員であっても、賃金は「初任給の2倍以上」になることが多くあります。これは、「欧米の人からすると信じられないこと」だそうです。つまり、入社の段階で少数のエリートと大多数のノンエリートが分かれるのが欧米社会であり、区別されないのが日本の特色ということです。日本型雇用システムは、多くの正社員が希望をもって上を目指せる素晴らしい社会なのかもしれません。

 「誰もが階段を上れる社会」はブラックな一面を持ちます。常に改善・上昇を求められ成果を出すためにと、長時間労働が助長されてしまう。やりたくない仕事を強制され、転勤もあります。上昇志向が強くないふつうの従業員には、迷惑な話かもしれません。そして、これらはいわゆる正社員の話であり、非正規労働者の犠牲の上に成り立っているという部分も指摘されています。

 この書籍は、17冊の歴代の名著を紹介しそれらの著者と往復書簡を交わすという面白い手法を取っています。雑誌の書評のような感じかな?と一瞬思います。でも、違うのです。著者である海老原・荻野両氏が伝えたい日本型雇用システムの功罪とこれからについて、著名な研究者たちを利用しているズルイ本です。そして、分かりやすいことこの上ない書籍です。人事担当者としての見識を高めるための一冊として、是非お薦めしたいと思います

 

 

著    者:海老原嗣生、荻野進介

出 版 社:白桃書房

発 売 日:2018年10月

カテゴリー:専門書(雇用システム)

 

 

 

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