メンバーシップ型雇用とは何か ~日本的雇用社会の真実

 流通業の経営史や労働組合史について学べる書籍です。

 例えば、「丸井」が出てきます。丸井は、百貨店というよりは月賦販売店チェーンであり、百貨店協会には加盟していないそうです。月賦店は、もともと愛媛県発祥のビジネスであるため、月賦販売店の創業者は愛媛県出身者が多く、草分けは今治の呉服問屋の丸善です。その縁で、月賦販売店には「丸」のつく屋号が多いとのことです。また、「十字屋」の歴史についても紹介されています。創業者である山藤氏が信心深いキリスト教徒であったため、正義と愛のシンボルである十字架から屋号をとって開業したものだそうです。このようなミニ経営史も交えながら、簡単に流通業の労働組合についても学べます。

 一方、タイトルにあるメンバーシップ型雇用について紙幅の多くは割かれていませんが、最近目立つ「ジョブ型雇用」について著者は警鐘を鳴らしています。ジョブ型雇用の用語法や考え方は誤っており、その原因が「ゴミ箱モデル」にあると次のように説明します。

 「私はジョブ型雇用論議の錯綜には、別の理由もあると考えている。経営学を学んだ者からすれば、すぐ直感することだが、「ゴミ箱モデル」の状態になっているからである。さまざまな人々がその問題意識やそこから考えた問題解決の選択肢を投げ込んだゴミ箱から、別の人が別の選択機会に解決策として決定するという意思決定の考え方ができる。このため、問題意識や解決策は常に変動しタイミング次第となる。経営者は労働者や雇用だけに心を砕くわけではない。広く(浅く)考え、「いいとこどり」の決定に至る傾向は否めない。」

 何とも耳の痛い指摘です。人事担当者は、安易にジョブ型人事制度などと言ってはいけないようで

著    者:本田 一成

出 版 社:旬報社

発 売 日:2023年6月

カテゴリー:一般書(労使関係)