改訂新版 ベア・定昇の実際 ~これからの賃金決定と配分政策

 ベース・アップ、できていますか?

 ベア(ベース・アップ)は、ベース(賃金表)をアップ(プラス方向への書換)させることですが、実施されない期間があまりに長かったため、その手法が継承されていない会社があるかもしれません。いわゆる春闘でメディアに登場する昇給額や率は、たいてい「定昇+ベア」の数値です。人事担当者が実務に臨む時には、定昇とベアを分ける必要があります。定昇とベアは、「加減」ではなく「乗除」の関係になります。

 定昇(定期昇給)は、人事制度の運用そのものなので悩みませんが、ベアは政策的に実施するのでどのように配分するかの意思決定が必要です。例えば、初任給と中高年への対策では、ベアの配分は大きく異なる方向になるでしょう。適切な意思決定をするためには、日頃から自社の賃金カーブの状況を把握しておく必要があります。ベアの配分は、頭を使う仕事といってよいでしょう。ちょとした数学の世界です。

 上記のような賃金実務を実施する人事担当者は、当然に勉強が必要です。その助けになるのが本書です。ベアが盛んだった頃、ベストセラーになっていたと思います。著者である「楠田 丘」先生は、職能資格制度の普及に尽力された方です。キャリアを積んだ人事担当者の中には、セミナーでお世話になったりこの書籍で勉強したりした人が数多くいるだろうと思います。

 今となっては懐かしい部類の書籍ですが、実務的に詳細に理解できるよう書かれており、今日でも大変役立ちます。図書館でも構いませんし中古であれば入手できるようですので、一度手に取っていただく価値のある書籍だと思います。人事担当者として定昇とベアの実務について、基本的な手法を理解しておくことは重要でしょう

著    者:楠田  丘

出 版 社:経営書院

発 売 日:1991年4月

カテゴリー:実務書賃金実務