非正社員改革 〜同一労働同一賃金によって格差はなくならない

 著者は、研究者として同一労働同一賃金を真正面から批判します。

 「企業は同一労働同一賃金を実現すべきだ、というのは、いったいいかなる根拠に基づき論じられているのだろうか。〜そんな議論に、あろうことか研究者まで乗せられてしまっている・・・。」はしがきに出てくる文章です。この研究者の名前を書かずとも、誰を批判しているのか、多くの人に伝わるでしょう。

 日本型雇用システムは、労使の慣行によって作られてきたものなので、法律が直接介入するのではなく、労使の私的自治を促す法政策をとるべきだと著者は述べます。労働法という大きなフレームワークの中で、同一労働同一賃金関連法の持つ意味や矛盾点を分かりやすく、かつ深く教えてくれます。論理的でありながら、誰にでも分かる読みやすい文章で構成されています(補論と最後を除いて・・・)。

 実務家からすると、次の文章が最も気になります。「多くの企業では、正社員と非正社員との間で、基本給の決定方法が異なるので、指針による限り、格差が不合理とされる余地はないことになる。」と著者は述べています。例えば、正社員の基本給は「職能給」、非正社員の基本給は「職務給」となれば、いわゆる同一労働同一賃金ガイドラインは適用されないということです。重要なのは、「いかに合理的な説明ができるか」です。そのためには、自社の現状分析をして基本給等の考え方をはっきりさせる必要があるでしょう。

 同一労働同一賃金の対応マニュアル的な書籍がたくさん出てきています。しかし、法律の表面的な解説や初歩的な対応策に留まるものが多いようにも感じます。そのような中で、同一労働同一賃金の背景や位置づけをしっかりとおさえたい人事担当者には、必要な書籍だと思います

 

 

著    者:大内 伸哉

出 版 社:中央経済社

発 売 日:2019年3月

カテゴリー:専門書(労働法)

 

 

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