人事評価の法律実務
めずらしいタイプの書籍です。
労働法を専門とする弁護士たちが、評価制度について書いたものです。全9章で構成され、そのほとんどがQ&A形式になっています。この中でも変わっているのは第8章で、弁護士の先生方が合宿して評価制度について法制面から議論したそうです。その際のやりとりが議事録のように掲載されており、各弁護士の考え方や生の声が伝わってきます。また、同一労働同一賃金関連法の施行を控え、次のように、かなり批判的な意見が出たようです。
A弁護士:
「基本給については、○○先生の本によると、職能資格や能力に応じて賃金を支払う場合、同じ能力評価で賃金を支払わなければならない、と書いてありますが、それは違うと思います。」
「ガイドライン案は、同じ制度であるならば同じ基準でと言っているだけなので、なぜ違うのかを説明できればいいのです。」
B弁護士:
「○○先生は違うものは違うなりに均衡しろというのですが、抽象的な均衡というのはないですよね。全く違うものを天秤に載せて、どう均衡させるのかと。」
「有期短時間と、正社員は同じでないといけないというのは、もともと違うものを同じにしないといけない、ということでおかしな議論だと思います。」
このどちらも、著名な弁護士です。同一労働同一賃金関連法の施行後、実際の裁判では、いろいろありそうな予感もします。好奇心旺盛な人事担当者にお薦めしたいと思います。
著 者:第一東京弁護士会 労働法制委員会/安西愈など
出 版 社:労働開発研究会
発 売 日:2019年5月
カテゴリー:実務書(労働法)