テレワーク導入の法的アプローチ

 テレワークは、うまく機能していますか?

 新型コロナウイルスの流行により、十分な準備もできないまま半強制的にテレワークに突入せざるをえなかった会社もあることでしょう。メディアの中には、テレワークの導入によって「多様な働き方」が実現されたといわんばかりの論調を見かけますが、ここで立ち止まってテレワークのデメリットについても目を向けるべきではないでしょうか。テレワークには、向く仕事と向かない仕事があると思います。著者は、ごく少数の対象者や個別の例外的な場合をもって、「当社もテレワーク制度を導入し大いに効果を上げている」と述べることに慎重な姿勢を見せます。

 この書籍は、Ⅰ章(テレワークに関する基本知識)、Ⅱ章(雇用型テレワークへの労働法規の適用)、Ⅲ章(テレワーク制度導入の実務的留意点)で構成されています。Ⅰ章では、基本知識を整理しながら、メリットとデメリットについて記述しています。メリットとして「ワークライフバランスの実現」、「生産性の向上」、「コストの低減」などが挙げられています。反対に、デメリットとしては「仕事と私生活の区別が曖昧となることによる弊害」、「出社しないこと自体による業務効率の低下」、「コストの増大」などが挙げられています。メリットとデメリットの双方に同じような項目が並んでいるのも面白いと思います。また、Ⅲ章では就業規則の“規定ぶり”に関する解説も載っていますので参考になるでしょう。

 今後、引き続きテレワークを活用するためには、どこかのタイミングで振り返り、改めてその有効性を確認するのも良いと思います。そのための参考書として、基本を整理するのに役立ち

著    者:末 啓一郎

出 版 社:経団連出版

発 売 日:2020年2月

カテゴリー:実務書(労働法)