労働法の基軸 〜学者五十年の思惟

 ある学者のキャリアを通じて、労働法発展の経緯を学べます。

 労働法を深く勉強した人事担当者なら、菅野和夫先生のお名前を知っていることでしょう。この人の法解釈が変わると判例も変化すると言われるほどの大物です。この書籍は、門下の岩村正彦先生と荒木尚志先生のインタビューに、菅野先生が答える形で綴られたものです。菅野先生は、岩村先生と荒木先生という大家を育てたわけですから、それだけでも大きな功績です。師匠と弟子の会話形式で記述されていますので、とても読みやすいものになっています。

 「本書で述べた50年の軌跡を振り返りますと、キーワードはとにかく「変化」でした。」 これは、終章で菅野先生が述べた一言です。含蓄のあるお言葉だと思います。労働契約法や労働審判制度など、菅野先生がいたからこそ実現できたといっても過言ではないでしょう。日本の労働法学会を率いてきた学者が、どのようなキャリアを歩んできたのか気になるところです。菅野先生のキャリアは、まさに波乱万丈です。労働法が形作られていく過程にどのような人たちが登場し、どのように関わっているのかについて、その一端を感じることができます。

 この書籍は、労働法の実務に関するものではありませんが、昭和から平成の時代を経験した人事担当者にとっては、その裏事情が学べる貴重なものです。生涯を通じて誠実に向き合ってきた労働法学者のキャリアにきっと共感できる部分があるでしょう

著    者:菅野 和夫

出 版 社:有斐閣

発 売 日:2020年5月

カテゴリー:その他(労働法)