統計で考える働き方の未来 〜高齢者が働き続ける国へ

 「年金財政の悪化を解決するには4つの方法がある」そうです。

 (1)年金支給額の引き下げ、(2)支給開始年齢の引き上げ、(3)保険料の引き上げ、 (4)GDPの拡大です。(3)または(4)を選択することは簡単ではないため、「年金支給額を引き下げる」か「支給開始年齢を引き上げる」かの選択肢が「近い将来、政治的に決断されるはず」だと著者は述べます。そして想定されるのは、それなりの年金+それなりに働く高齢者の組み合わせです。事務系職種で定年まで務めた人が、その後パートタイムで現業系職種に就くことが一つのモデルになるようです。事務系職種で管理職を務めたような人にとっては、現業系の仕事を物足りないと感じる可能性もありますが、それなりに満足している元管理職の事例が出てきます。

 また、定年後の「再雇用は主流足りえない」と言います。著者は、新規学卒一括採用からの長期雇用は日本の発展に貢献していると評価する一方、このような内部労働市場は高齢者に向いていないと述べます。高齢者の労働市場は、現役世代と切り離した方がうまくいくそうです。

 60歳台前半の雇用を考える場合、65歳まで定年を延長するべきか、または現状最も多い定年後再雇用でよいのか悩んでいる会社が多い中、高年齢者雇用安定法が改正され70歳までの雇用の努力義務が創設されました。まさに今後の方向性が模索されているところです。自社の中高年対策を検討している人事担当者の参考になる書籍かもしれません

著    者:坂本 貴志

出 版 社:筑摩書房

発 売 日:2020年10月

カテゴリー:新書(高齢者雇用)