人事の組み立て 〜脱日本型雇用のトリセツ〜

 「企業に一方的な人事権はない。これが欧米と日本の大きな違いなのです。」

 ここまで、はっきり言ってくれるとすっきりします。「ジョブ型雇用」に関するウソ撲滅運動の先頭に立っているのが、労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎氏だとすれば、その応援団長が著者だといってよいでしょう。よくある典型的なウソは、ジョブ型雇用と成果主義を結び付けたものです。コンサルタントの“営業ネタ“に使われているといってもよいでしょう。「ジョブ型雇用」とは何か、を理解させてくれる書籍です。

 事例の一つとして、フランスが登場します。欧州では仕事に就くときに「職業資格」が要求され、その資格ごとに昇進できる限度が見えているそうです。仕事には職業資格が必要とされるため、別の仕事には移りにくくなります。フランスには「カードル」と呼ばれる学歴エリート層が存在し、通常の従業員のキャリアとは断絶されていることは有名です。「この職業資格と学歴の掛け合わせで就けるジョブが決まり、その中でキャリアを全うする」ことになります。ジョブが労働契約の中心にあり、人事異動がないので上にもヨコにも行くことができず、俗に「籠の鳥」と呼ばれるそうです。これが、「ジョブ型雇用」の一例です。

 ウソつきな人事コンサルタントに騙されないよう、人事担当者は正しい知識を持たなければなりません。まっとうな人事担当者にお薦めしたいと思います

著    者:海老原 嗣生

出 版 社:日経BP

発 売 日:2021年4月

カテゴリー:一般書(雇用システム)