AIの経済学

 AIについて簡単に理解させてくれます。

 将来、AIが人間の雇用を奪うというような話を聞くことがありますが、過度な心配をする必要はないようです。著者は、「同じ職業でも業務の中には代替されるものとされないものがあるはず」だと述べます。また、「AIと強い補完性を持つ仕事、労働も出現してくることになる」と指摘します。その通りでしょう。仕事はさまざまな部分で複雑に構成されているため、全てについてAIが代替することはできないでしょうし、仕事は変化していきますので、新しい仕事も生まれてきます。

 AIとは何かを理解し難い部分がありますが、著者は椅子を例として説明してくれます。「AIが椅子の機能を理解したり、常識をもって判断しているわけではなく、あくまで膨大な数からパターンを学ぶことにより、人間特有と考えられてきた暗黙知の領域への浸食が起きていると理解すべきなのである。」人間は、いろいろな形の椅子であっても、常識的に「これは椅子だ」と判断できますが、暗黙知の領域が絡んでいるため機械にはそのような曖昧な判断をすることができないそうです。それをビッグデータ等から予測し、「トライ・アンド・エラーで自ら正解に近づくように「学習する機械」」がAIであり、「時間の経過とともにその予測精度を改善していくように設計されている」そうです。

 各章の最後には、まとめのコーナーがありAIに対する理解を整理してくれます。人事担当者にとっては、とっつきにくいAIですが、将来への布石として向学のためにお薦めしたいと思います

著    者:鶴 光太郎

出 版 社:日本評論社

発 売 日:2021年4月

カテゴリー:一般書(AI-人口知能)