企業組織再編と労働契約

 企業グループには再編がつきものです。合併であったり、会社分割であったり、様々な再編が実施されます。会社法の世界のことであり、人事担当者には馴染みが薄いかもしれません。しかし、ことが動き出せば、労働契約がどのように存続するかなど、人事担当者の扱うテーマにはとても重いものがあります。上場会社のようにインサイダー取引に細心の注意が必要な場合には、企業再編の情報はトップシークレットでしょう。一般の人事担当者に知らされた時には、実行までわずかの時間しか残されていないことも珍しくありません。いざ、という時に慌てないためにも事前に学んでおくことは必要です。

 著者は、元日本労働弁護団の会長であり労働側弁護士として著名な存在です。経営側弁護士に相談する人事担当者からすれば、反対側の視点で書かれた書籍になります。これがかえって分かりやすい雰囲気を醸し出しているかもしれません。企業再編に際して従業員がどのような視点を持つのかが伝わってきます。例えば、「法人格否認の法理」が出てきます。子会社の問題であっても、親会社が過度に介入していると子会社の法人格が否定されるという考え方です。その場合、親会社が当事者となり子会社の労働組合と直接交渉しなければならない場合があります。親会社の人事担当者であれば、気を付けなければならないポイントでしょう。

 企業グループで働く人事担当者にとって、他人事とは言っていられない内容のオンパレードです。比較的読みやすいと思いますので、この機会にトライしてみるのもよいと思い

著    者:徳住 堅治

出 版 社:旬報社

発 売 日:2016年4月

カテゴリー:実務書(労働法)