実務詳解 職業安定法

 参考になります。

 著者が指摘するように職業安定法に関する参考書は少ないと思います。労働基準法などと比較すると人事担当者には馴染みが薄い分野かもしれません。しかし、意外に関わっている部分も多く、放っておけない分野だと言えます。

 職業安定法第44条は労働者供給事業を禁止しています。業として労働者を他の会社へ派遣すれば違法になるわけです。この形態に該当するのが出向です。ただし、出向は雇用機会の確保や企業グループ内の人事交流などの目的が明確であれば、業として行っているとはみなされません。本書は、出向の位置付けについて、知識を整理するのにも役立ってくれるでしょう。なお、労働者派遣法も例外に該当します。

 人事担当者であれば採用面接の際にメンタル疾患等の既往症について確認したいと思うことがあるかもしれません。しかし、既往症は要配慮個人情報であるため、聞いても良いのか迷うこともあるでしょう。著者は次のように書いています。「個人情報保護法上、あらかじめ本人の同意を得ることが必要であるが、その取得自体は禁止されていない。なお、本人の同意を得ることとの関係では、「回答したくなければせずともよい」等として、回答するか否かは任意の形で質問するのが妥当と考える。」このような実務的なアドバイスも記述されています。

 また、直接の関係は薄いかもしれませんが、改正職業安定法(2022年10月1日施行)は、インターネット上の求人に関する届け出や許可などの規制を強化しています。少々読みにくい部分もありますが、人事担当者として見識を高めるために有意義な書籍だと思います

著    者:倉重公太朗、白石紘一(編)

出 版 社:弘文堂

発 売 日:2023年7月

カテゴリー:実務書(労働法)