人的資源管理 ~事例とデータで学ぶ人事制度

 とても良い本です。

 人的資源管理論を「人事制度のフレーム」で説明しれくれるので、とても分かりやすいです。例えば、企業の競争戦略と人的資源管理のリンクが紹介されています。「製品・サービスの開発を重視する競争戦略では、~社員に裁量を与え、教育訓練を充実させ、長期的な成果を重視して人事評価などを行うべき」であり、「コスト削減による製品・サービスの低価格化を重視する競争戦略では、~各人の仕事を狭く特定し、必要最低限の教育訓練を行い、短期的な成果を重視した人事評価を行うべき」と書かれています。これが正しい選択だという解説ではありませんが、著者が言うように「一理あるように」見えます。

 また、著者は「客観的な評価」について否定し、次のように述べます。「人事評価は、社員への期待をもとに評価要素や評価項目を選ぶプロセスからして、企業としての価値判断から中立ではありえない」し、「同じ売上を基準とする場合も、いくら売上をあげれば高い評価と見なすかは、企業や評価者による社員への期待の大きさという主観的な判断によるところが大きい。それゆえ「客観的」であることは、人事評価制度の設計や運用の最終的な目標とはならない。」と書かれています。ごもっともなことだと思います。

 たくさんの伝統的な理論も織り込みながら、人事担当者の仕事である人事制度として解説してくれる書籍です。理論と実務の橋渡しになっているので、実務で使える見識がたくさん出てきます。久しぶりに人事制度の良書に出会えた感じで

著    者:佐野嘉秀、池田心豪、松永伸太朗

出 版 社:ミネルヴァ書房

発 売 日:2025年4月

カテゴリー:教科書(人的資源管理)